海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

マイ マルファン ストーリー:ケーシー・ランフィア

2018年2月27日
Kacey Lamphier

 

2月は心臓月間ということで、私にとっては特別重要な月です。私は30年間マルファン症候群と共に生きてきましたが、診断を受けたのは22年前です。私は日々マルファン症候群についての自らの体験や知識を広げる活動をしています。私達が声を上げれば上げるほど、多くの人々が救われることになります。これが私のマルファンストーリーです。

 

雪の降るある昼下がりのことでした。私は小学三年生。心配事など一つもありませんでした。教室のドアをノックする音がして事務員が入ってきました。私の名前を呼ぶと、荷物をまとめるように言いました。「やった!早く帰れるんだ。」早退は子供にとっては夢のような出来事です。

 

ポカポカするベビーシッターの車に乗り込むと、パパとママが病院にいることが分かりました。パパの具合がよくないというのです。車が家の敷地に入ると、新しく積もった雪の上に細い車輪の後が残っていました。家の中は少し散らかっていて、パパの手袋が腰掛けにぶら下がっていました。「持っていけばいいのに。外は寒いんだから。」荷物をカバンに詰めて車に戻ると、近くにある病院の救急処置室へと向かいました。明るい廊下を歩く時や大きなドアを通る時には、道案内をしてくれたベビーシッターのジューンの手をしっかり握っていたのを覚えています。家族の何人かはもう到着していて、ハグで迎えてくれました。ママが「パパの具合が悪くてお医者さん達が治してくれているの」と教えてくれました。ママに連れられてパパと会いました。パパは大きなベッドに寝ていて、たくさんのチューブが体から出ていました。ベッドの周りでは機械が色々な音を立てていました。パパは全くの別人のようでした。でも私を見て微笑んでくれたので、やっぱりパパだと思いました。パパは私を抱きしめて、「愛してる」と言いました。「私もだよ、パパ。」

 

廊下に出ると、男の看護師さんが私の目を見て「心配しなくて大丈夫。元気なパパをお家に帰してあげるからね」と約束してくれました。

 

その日パパとママはカナダ・プリンスエドワード島のシャーロットタウンから、自宅に近いノヴァ・スコシア州のハリファックスへと救急車で移動しました。雪道を走ってフェリーに乗り、さらに車で4時間以上の道のりでした。宿泊場所からママがおやすみの電話をくれました。―もう少しで会えるから。ママはそう言って私を安心させてくれました。

 

次の日、家へと続く道に入ると車が数台、家の外に止まっているのが見えました。「パパを喜ばせようとしてみんな来てくれたんだ」と思いました。家に入ると知っている人が何人もいました。ママの目はクリスマスツリーの光と私への愛情でキラキラしていました。ママに抱きしめられた私はすぐに何かがおかしいことに気づきました。もうママの言葉を聞く必要はありませんでした。もう分かっていました。パパは亡くなったのだ、と。見た目では健康そのものの41歳の父親は、1995年12月19日、大動脈解離で旅立ちました。私は7歳でした。

 

―なぜこんなことになったのだろう。すべてがうまく行っていたのに。パパは健康で勤勉な父親であり、息子であり、夫であり、兄であり、叔父であり、会社のオーナーでもありました。―雪かき中の突然の胸の痛みで人生最悪の日を迎えることになるなんて。何が起こったのだろう。

 

数ヶ月が経過し、私達家族にとっては病院が第二の自宅となっていました。ひっきりなしにやってくる医師、終わりの見えない通院、測定、検査の連続でした。1996年春、ついに謎が解けたのです―マルファン症候群―遺伝性の結合組織疾患です。私の叔父、祖母、いとこ、私が診断を受けました。―こんな見ず知らずの病気がなぜ私達家族を苦しめるのだろう。私達はこの病気についてなぜ何も知らなかったのだろう。私達の将来には何が待っているんだろう。

 

これが22年前の出来事です。人生は楽しいことばかり続きません。研究が進み情報が手に入るようになり、私達の住むカナダの小さな州でもコミュニティや病院からの支援が広がってきました。30歳の大人となった私は、辛いこともたくさんあれば、逆もまた然りだということもわかるようになりました。父親のことを思い出さない日は一日たりともありません。でも1995年のあの悲しい出来事がなければ、私の人生はどうなっていたのでしょう。私には素晴らしい家族、応援してくれる友人、信頼できる医師がいて、ガーディアンエンジェルが私の心臓を見守ってくれています。私の体験が皆さんのマルファン症候群との向き合い方や診断の助けとなるのなら、報われた思いがするのです。

 

Kacey Lamphierさんについて


カナダ・プリンスエドワード島出身の整形外科勤務の看護師。友人や家族、執筆活動を大切にし、ボーイフレンドと3匹のペットと暮らす。マルファンライティンググループの一員であり、マルファン症候群の啓発活動を続けたいと思っている。

  

出典:

blog.marfan.org

 

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