海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

マルファン症候群の診断を受けて:不安からの解放

2019年2月15日

Ken.M

 

昨年、40歳の大台を迎えました。あっという間だったと感じています。成長、遊び、テレビを見る、通学する―振り返ってみると、ほんのわずかな歳月だったように思います。

 

 

学校生活

 

学校に入学して日が浅いうちは、楽しく遊んで、勉強することができました。学校では、何も知らない子どもたちに囲まれます。子どもたちは何のためらいもなく、目に見えることを声に出します。自分たちが知っているもの(それほど多くを知っているわけではないのですが)とは違っているからです。そして子どもたちは似た者同士でグループを作り、話し方が違ったり、動作が違ったり、見た目が違ったりする子どもを指差すようになるのです。

 

3歳になる頃には、私はメガネをかけていました。両親が私が顔にものをくっつけて見ていることに気付いたのです。大したことだとは思いませんでした。私の母は近視であり、しかも度が強い方だったからです。当然、私の近視も母の遺伝だろうと思いました。しかし、年を重ねるにつれ、レンズは分厚くなっていきました。母のレンズの厚さのほぼ2倍です。それにしてもDNAとは面白いものだと思いませんか?そのレンズの厚さから「コーラ瓶」というあだ名が生まれ、私は正式に「違った人間」になりました。

 

なぜ「コーラ瓶」かというと、メガネのレンズの厚さが、古き良き時代のコーラ瓶を思い起こさせるからです。私の顔が細長くなっていたことで、通常サイズのフレームが顔に合わなくなりました。代わりのメガネは縁が厚く、中心に向かって薄くなっていました。そのため、このメガネが望遠鏡の役割を果たし、顔の大きさに比べて目が小さく見えるようになっていたのです。メガネをかけてはいましたが、メガネをかけた普通の子どもには見えませんでした。

 

高校入学が近づき、両親にコンタクトレンズを買ってくれるようお願いしました。当時、コンタクトレンズは医療器具というよりも、見た目をよくするためのものだったので、作戦を練らなければなりませんでした。やっとコンタクトレンズを手にした私は神様に感謝しました。―これでいじめがなくなるだろう。自分はカトリック男子校の一生徒でしかないんだし、同世代の男子はみんな思春期だ。いじめられることはないだろう。

 

メガネをかけていた間に、昔の丸々ふっくらしていた面影はなくなっていきました。ひょろっとしておどおどした自分は、ただ攻撃されるのを待つだけのセレンゲティ国立公園にいるガゼルのようのでした。高校入学時には6フィート115ポンド(約182cm, 52kg)でした。攻撃が始まりました。

 

高校には小学校時代の友達と一緒に通っていたので、仲間はいました。オタクだったわけではありませんでしたが、かといってイケてる子どもではなかったので、コンプレックスはありました。

 

自分の中に熱くなりやすい部分はありましたが、実際の自信はほとんどありませんでした。カッとなったおかげで肉体的ないじめを避けることはできました。いじめの大半は言葉による辱め、冗談、悪口でした。「やれるもんならやってみろ」などと言える人は、いじめられることはなかったと思います。

 

適応する

 

とはいうものの、つらくてつらくて大変だったというわけではありません。ある年、私はレスリングチームの一員になりました。でも一試合も勝てませんでした。バスケットボールのトライアウトを受けたこともありますが、私の身長では背の高さが求められるセンターにはなれず。2年間サッカーもしましたが、ベンチを温めてばかり。全体的に見ると、非常にアクティブな子どもでした。エネルギーが有り余り、何時間も走り続けることができました。

 

高校を卒業し、大学に進学することになりました。授業で初めて女子の隣に座りました―ムムム、キャンパスは女子だらけです。でもどうしたらいいかわかりません―何かしなければ―私はジムに通い始めました。

 

山あり谷ありではあったものの、ジムに通うことで大きな自信が付き、ジム通いが習慣になりました。ジムでトレーニングしているという自信やジムに所属しているという感覚は、何事にも変えられない大切なものです。はじめの数カ月間は自分のメンタルとの戦いでしたが、ジム全体が自分を見守ってくれているという感じでした。

 

ジムに通う人たちとも話すようになりました。「ムキムキでうらやましいです」と言われた私は「君みたいな大きな体になりたかったよ。入れ替われないのが残念だ」と返しました。誰もが何かしら気に掛けている部分がある―ジムで学んだこの教訓は、年齢を重ねる私の支えとなりました。

 

診断と安堵

 

冒頭で40歳になったというお話をしましたが、まだ自分の脚にコンプレックスはあります。ふくらはぎがほとんどなく鳥の脚のようです。明らかに脚のトレーニングをさぼった感じです。今も人前でショートパンツは履きたくありませんが、だいぶ慣れました。20代前半、格闘技の授業で片方の眼に網膜剥離を起こしました。夜の運転ではハードコンタクトレンズの上から専用のナイトグラスを掛けます。関節はどこも痛みますし、肩の関節唇は裂け、膝の半月板も割れています。45分以上立っていると腰が痛くなります。

 

40歳になってまもなく大きな出来事がありました。大動脈基部が拡張していることがわかったのです。そうです。皆さんよくご存知の症状です。私は40歳で正式に検査を受け、マルファン症候群の診断を受けました。

 

なんというか…本当にホッとしました。検査が陽性でよかったと思います。これまで、色々ありましたが、自分のせいでははないと証明されたからです。事実、自分は他人とは違っていたのです。実際、自分は突然変異型です。変に聞こえるかもしれませんが、マルファン症候群とわかったことで、自分にとっては単純で肝心な「なぜ」 への解答が得られることになったのですから。

 

「なぜ目が悪いのだろう?」「なぜ棒のような体型なのだろう?」「なぜ二の腕やふくらはぎが不格好なのだろう?」「なぜ手首、足首が異常に細いのだろう?」「扁平足なのはなぜだろう?なぜ90年代にローラーブレードができなかったんだろう?」こうした疑問は全て解消し、肩の荷がおりました。

 

それでも「問題」はありますが、これは誰にでも当てはまります。「他人がどう思うかは気にしない」ということの大切さを教えてくれた素晴らしい友人達には感謝したいと思います。数年前には自己認識に関する素晴らしいコースを受講しました。自信と自尊心は最高に高まっています。私の日常は誰もが送る日常です。でも「何でも」できるわけではないということは理解しています。

  

早期の遺伝子検査を

 

自分の人生を赤裸々に語ってきましたが、背景には早期にマルファン症候群の遺伝子検査を受けてほしいということ、そしてこの疾患全体の認知度を上げたいという想いがあります。これまで私は、マルファン患者がすべきでないことをたくさんしでかしてきました。それについては、GoogleやThe Marfan Foundationのサイトで検索してみてください―サッカー、バスケットボール、長距離走、ウェイトリフティング、ステロイド、格闘技、などなど、禁止事項として挙げられています。私は運良く生き延びることができました。

 

診断が間に合わず、バスケットボールやサッカーの試合中に命を落とす人達がいます。マルファン症候群は5,000人に1人とされていますが、地球全体の人口で考えれば、相当な数になります。

 

私と同じ経験をした方々、あるいはもっと症状の重い方にも、行動を起こしてほしいと思っています。自分の病気を認識すること、そしてメンタルを大事にすることが何よりも重要です。メンタルヘルスの本を読み、YouTubeを見て、ソーシャルメディアで気になる人をフォローする、などなど、できることは何でもするべきです。私は始め一週間に6日ジムに通い、見た目を変えようと努力しました。メンタル面も鍛えるべきだったと気付くまでには、さらに15年かかりました。

 

親御さんへ― マルファン症候群のお子様をお持ちなら、お子さんの心の健康、そしてご自身の心の健康にも時間を割いてあげてください。私が「ご自身の心の健康」と申し上げたのは、お子さんがマルファン症候群となったのは、親御さんの責任ではないからです。たとえご自身に遺伝子変異があり、それが遺伝したとしても、あなたの責任ではありません。今日では医学も大きく発展しましたが、同時に医療費も高額になりました。ですから、誰を責めることもできません。これから先の人生を見据えて、可能な限りマルファン症候群についての情報を得るようにしてください。

 

私の場合は40歳まで何も知らず、心臓の手術を受けることになりました。

 

Ken.Mさんについて

 

クリエイティブ広告ライター。定期検診のCTで大動脈基部の拡張が見つかり、40歳でマルファン症候群の診断を受ける。その数カ月後にDavid術(自己弁温存大動脈基部置換術)により大動脈弁を修復する。熱烈なゴルファーであり、自己認識と心理学をこよなく愛する。趣味は旅行・人との出会い。 

 

出典:

blog.marfan.org

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

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