海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

大動脈手術を控えた皆さんへの外科医からのアドバイス

 

マルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群、血管型エーラス・ダンロス症候群の患者さんにとって、最大のハードルのひとつが大動脈手術でしょう。この手術に向けて万全を期すにはどうしたらいいかについて、テネシー州ナッシュビルにある Ascension Saint Thomas 病院の胸部外科医である Clayton A. Kaiser 先生からお話を伺いました。

 

手術に向けてすべきこと

 

手術に向けた準備は患者さんそれぞれで異なります。これさえやっておけば大丈夫といった万人に当てはまる方法は存在しません。患者さんの中には、インターネットで開胸手術の動画を視聴するなど、手術について細かい部分まで理解したいという方もおられる一方、手術のことを詳しく知ってしまうと不安になるからと、手術については何も知りたくないという方もいらっしゃいます。私は普段、手術前に患者さんが手術動画を見ることはおすすめしていません。というのは、医療者でない方が、そうした動画を見ながら、手順を追ったり、内容を理解したりすることは負担が大きいと考えられるからです。一般的なアドバイスとしては、どういった手術を受けるのかについて理解しておき、上行大動脈を交換する手術だとか、大動脈弁を修理する手術だといった具合に、手術の基本的な部分を家族や友人に説明できるようにしておくということです。基本的な内容を超える部分の理解については、ケースバイケースでの対応が可能と考えます。

 

手術に向けた準備の大切さ

 

開胸手術は影響の大きな手術であるため、患者さんおよびご家族は、常に執刀医およびスタッフから手術範囲についてしっかりとした説明を受けてください。体力面・精神面においてできる限りのベストな状態で手術に臨むことで、手術からの回復が順調に進む、入院期間が短くなる、自宅に戻ってから早期に以前の活動ができるようになる、などの理想的な結果につながる可能性を最大限に高めることができます。

 

手術に向けた体力面でのアドバイス

 

体力面で手術に備えることに関して言えば、少なくとも手術予定を入れる前と同程度の活動状態を保つべきだと思います。例えば、これまで日常的に屋外でウォーキングやジョギングをしていたということであれば、こうした活動を継続するということです。これまで運動をしてこなかった患者さんの場合、大きな負荷のかかる運動を始めるタイミングではありませんが、定期的に適度な運動を行うのであれば、効果が期待できる可能性があります。例えば、30分のウォーキングから始めて、許容できる範囲で負荷を高くしていくといった運動です。同じことですが、手術までの数週間、数段の階段の上り下りを続けるといったことでも効果が期待できます。一般に、手術前に活動的であればあるほど、元の生活を取り戻すまでの時間が短くなることがわかっています。

手術に向けた精神面でのアドバイス

 

精神面において手術にどう備えるかに関しては、患者さんそれぞれで異なりますが、まずは執刀医との率直な対話から始めるのがよいでしょう。とりわけ、手術について詳しく知りたいと思っている方にはおすすめします。可能であれば、同様の手術を経験した他の患者さんとつながりを持ちましょう。これにより、今後起こることについて想像がつきやすくなります。また、こうしたつながりで最も大事なことは、完全に元の生活を取り戻すことができるということを実感させてもらえるということです。The Marfan Foundation は、同様の境遇にある人々をつなぐべく、素晴らしい支援の手を差し伸べていますので、ぜひご活用ください。

 

術後の回復に向けたアドバイス

 

私がぜひともお伝えしたいことは、開胸手術からの回復は長い道のりであり、忍耐を要するということです。回復期にあたる2、3ヶ月あるいはそれ以上のこともありますが、その期間は体調の良い日もあれば、優れない日もあります。元の生活に戻れるまでが一直線の道のりとは限りません。小さな体調の後戻りは頻繁にありますが、回復経過の一部と考えてください。患者さんやご家族が落ち込むことなく、全体的な回復経過が良好であると信じ続けるためには、このような受け止め方が大切なのです。執刀医や担当チームを信頼しましょう。手術前の元気な状態を取り戻せるよう導き、支援してくれる存在なのですから。

 

手術のストレスを減らすには

 

心臓の手術を受けるということは怖いことですし、不安を感じることは全くもって正常といえます。心臓手術に対する不安や悩みを和らげる最も有効と考えられる方法は、大きくわけて2つあります。1つ目は、過去に同様の手術を受けた患者さんと話すということ、2つ目は、執刀医や担当チームを信頼するということです。どちらの方法に関しても、The Marfan Foundation がサポートの手を差し伸べてしてくれます。

 

 

The Marfan Foundation は、他の患者さんとつながり、情報や支援を得るための多く機会や、手術に向けての準備や様々なタイプの術式について学ぶための情報を提供しています。詳しく知りたい方は Marfan.org にアクセスしてください。また、YouTubeチャンネルの Aortic Health & Surgery Series もぜひチェックしてみてください。

 

 

出典:

digitaledition.pub

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

The Marfan Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、Marfan.org にアクセスし、当協会の専門家から成る諮問委員会が承認した内容をご参照ください。