海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

大動脈疾患の診断と管理に関する新ガイドライン(ACC/AHA)

2022年11月3日

 

THE MARFAN FOUNDATION

 

大動脈疾患の診断と管理のための新しいガイドラインが、昨日、Journal of the American College of Cardiology と Circulation に掲載された。この ガイドライン は、ACC(米国心臓病学会)とAHA(米国心臓協会)を代表する専門家チームによって作成され、大動脈疾患患者の診断、評価、薬物療法、血管内治療および外科的介入、長期監視に関し、文献から得られるエビデンスに基づく推奨事項を提示する。一部の症例は専門家の合意に基づく。この推奨事項には、他の種類の急性大動脈症候群と同様に、症候性および非症候性の遺伝的大動脈疾患に対する具体的な推奨事項が含まれ、共同で行う意思決定の役割についても強調されている。

 

ガイドラインは、以下を支持するものである。

 

  • 広範な大動脈疾患を有する無症候性患者、複雑な開胸術や血管内修復術が有効な患者、複数の併存疾患を有する患者に対しては、複数の診療科からなるチームの一員としての経験豊富な外科医のいる大病院において、外科的治療を受けるよう求めること

  • 症候性疾患、胸部大動脈疾患の家族歴、早期発症(60歳未満)に対する遺伝子検査

  • 特定の症例では、無症状胸部大動脈疾患のスクリーニングを目的とした、患者家族に対する胸部大動脈画像診断

  • Marfan症候群、Loeys-Dietz症候群、VEDS(血管型エーラス・ダンロス症候群)の患者で、下行胸部大動脈瘤が介入基準を満たし、適切な解剖学的構造を有する場合は、TEVAR(胸部血管内大動脈修復術)よりも開胸手術が推奨される

Marfan症候群に対する具体的な推奨事項は以下の通りである。

 

  • 最大耐用量のβ遮断薬またはARBアンジオテンシン受容体拮抗薬)による治療が推奨され、これらの併用療法が妥当である

     

  • 大動脈基部径が5.0cm以上、あるいは4.5cm以上で高リスクの特徴(大動脈解離の家族歴、急激な大動脈拡大、大動脈基部および上行大動脈の拡張、著明な椎骨動脈蛇行)を有する場合は、経験豊富な外科医による手術。また、大動脈基部の断面積と身長の比が10cm^2/mを超える場合にも手術が妥当である

     

  • マルファン女性で大動脈基部径が4.5cmを超える場合は、妊娠前に手術することが推奨される。4.0-4.5cmの場合、特に大動脈解離の危険因子がある場合は、妊娠前の手術が検討されることもある

     

Loeys-Dietz症候群に対する具体的な推奨事項は以下の通りである。

 

  • 最大耐用量のβ遮断薬またはARBアンジオテンシン受容体拮抗薬)による治療

     

  • 大動脈基部および上行大動脈の予防的修復のための手術は、特定の遺伝子変異、大動脈径、大動脈拡張速度、大動脈以外の特徴、家族歴、患者の年齢/性別、医師と患者の希望に基づいて行うべきである

妊娠に関する具体的な推奨事項は以下の通りである。

 

  • 妊娠中、大動脈瘤を有する、あるいは解離のリスクが高い女性は、母体胎児医学専門医と循環器内科医を含む、複数の診療科からなるチームによって管理されるべきであり、高血圧はガイドラインに従った治療が必要である。遺伝的な大動脈および血管の疾患がある場合、妊娠中や出産後にβ遮断薬を投与することが推奨される。大動脈弓、下行胸部大動脈(DTA)、腹部大動脈のサーベイランス撮影が必要な女性には、CTよりもガドリニウムを用いないMRIが推奨される。

     

  • 大動脈疾患を有する、大動脈径が4.0cm未満の女性では、経膣分娩が推奨される。大動脈疾患を有し、大動脈基部および/または上行大動脈径が4.0-4.5cmの妊婦には、局所麻酔による経膣分娩、分娩第2期の迅速な完了、補助出産および帝王切開分娩のいずれかが検討されることがある。慢性大動脈解離の女性には、帝王切開による分娩が推奨され、大動脈基部または上行大動脈瘤径が4.5cm以上の女性には、他に問題がない場合は妥当とされている。

この新しいガイドラインは、米国胸部外科学会、米国放射線学会、心臓血管麻酔医学会、心臓血管造影・インターベンション学会、胸部外科学会、血管外科学会の協力のもとに作成され、支持されている。

 

出典:

marfan.org

 

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