海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

大動脈解離が教えてくれたこと

納屋での重労働はお手のもの。自称「ウマ娘」のモーリーは、俵形をした80ポンド(約36キログラム)の干し草を放り投げていました。子供の頃から馬を乗りこなし、丈夫で健康に恵まれていた彼女。ところが、大学入学を数週間後に控えた2017年のこと。息切れとめまいに襲われ、異変に気が付きます。家族に大動脈解離の発症者がいたことから、検査は定期的に受けてきました。予定通り受けたMRI検査で大動脈が以前よりも膨らんでいることがわかり、クリーブランドクリニックの主治医である循環器内科のケン・ザッカ医師から手術を勧められることに。MRI検査から1ヶ月後、エリック・ロセリー医師(クリーブランドクリニック成人心臓外科部長兼大動脈センター長)執刀のもと、大動脈の修復手術を受けました。

 

「手術中に解離が起きちゃって。元々5時間の予定だったのに、かかったのは10時間。手術室で解離になったのは本当にラッキーでした。ロセリー先生が全部チェックして、必要な処置をしてくれました。手術室を出たあとには、歩くミラクルって言われたんですよ」

 

モリーの手術からの回復は、身体面・精神面の両方で困難なものでした。

 

「大学に通っていれば第一セメスターのはずだったんですけど… 自宅で過ごしながら手術を受けることに決めたので、他のみんなが大学に通うのを見るのはつらかったです。でも、必要なことだからと自分に言い聞かせていました」

 

回復に向け、懸命に努力を重ねたモーリー。心臓リハビリに通いながら、階段の上り下りや、郵便受けに手紙を取りに行く、家の近くにある湖の周りを散歩するなど、回復度合いに応じた目標をクリアしてきました。三ヶ月後には、少しずつ以前の生活を取り戻し始めました。大学にも通い、数ヶ月後には馬にまたがることができました。

 

「これまでの生活に戻れるって思いました。体力がどのくらい落ちたのかわからなかったので、あきらめたこともいくつかあるんですが、大好きなことを安全にできる方法を探そうとしていました。手術からの回復は大変だったんですけど、その経験から新たな考え方を学ぶことができた、そのことについては非常に感謝しています」

 

自覚から迅速な治療へ

 

手術から回復したモーリーは、自らが考える普通の生活へと戻っていました。乗馬を楽しみながら、大学に通えるようになっていたのです。2020年に遺伝子検査を受けた結果、マルファン症候群の類縁疾患である希少な結合組織疾患であるとの正式な診断が付き、定期検査を続けていました。

 

2021年1月、納屋でのこと。息切れ、めまい、疲労感、そして胸が締め付けられるような感覚を覚えた彼女は、電話で母親に納屋まで来るようお願いしました。

 

「納屋で座っていると、大動脈が裂けていくのを感じたんです。まるでナイフでお腹の真ん中を切り裂かれているようでした。これ以上ない痛みでしたね。何が起こっているのかはっきりとわかったので、すぐにザッカ先生に電話しました」

 

ザッカ医師は、救急外来に来るよう指示しました。CTの準備をして待っているから、と。病院に向かっている彼女のもとに、ザッカ医師からメールが送られてきました ―― 状況はロセリー先生が把握している。計画どおり進めるだけだ。君の命は救ってみせる。君には最高のチームがついているんだ。

 

CT検査の結果は、またもや大動脈解離。ですが、今回前触れはありませんでした。ロセリー医師による2回目の修復手術は成功しました。彼女は将来、大動脈を補強するための手術を再び受けることになっています。現在は、少なくとも半年に一度、画像検査などのためにクリーブランドクリニックに通っています。

 

心の安息は信頼できるチームから

 

単なる患者ではなく、人として見てくれる ―― 医師と看護師からなる循環器チームをモーリーはこう評価します。チームとの間にできた信頼関係のおかげで、自信を持って毎日を突き進んでいくことができるのだと語ります。

 

「信頼がおけて、背中を押ししてくれるチームの存在はすごく重要ですね。決断が必要なことや骨の折れる会話がしやすくなりますから。必要なときには、ザッカ先生が電話やメールですぐに返事をくれるんです」

 

熟練した医師団の他に、モーリーが信頼をよせているのが看護師のチームです。入院中は大いに助けられたといいます。痛みと困難を伴うICUでの2週間を乗り越えられたのは、彼らの細かな気配りとポジティブな姿勢があればこそでした。

 

アクティブに人を助ける

 

23歳となったモーリーは、人生を満喫しながら、今を生き、幸福を感じる活動にフォーカスすることを宣言しています。「発達心理学と早期介入」のテーマで修士号を取得し、今年の5月にケース・ウエスタン・リザーブ大学を卒業予定です。目指すキャリアは小児循環器。現在は乗馬によるメンタルセラピーを行う施設に勤務し、人々が障害を乗り越え、前向きに成長するための手助けをしています。健康を最優先に考え、心臓の健康状態をモニタリングしながら、心拍数を記載したトレーニング記録をザッカ医師に送信しています。ボランティア活動も始め、結合組織疾患についての啓発活動も行っています。その活動には、The Marfan Foundationが主催する Cleveland Walk for Victory のための募金活動も含まれます。

 

「人生は必ずしも思い通りにならないということを教えてくれたのは、大動脈解離でした。それでも、与えられたものを最大限に活用するという考えは、とても頼りになるんです。これまで私は多くのことをくぐり抜けてきました。なので、同じような経験をしている皆さんを、どんな形であれサポートしてあげたいんです」

 

モーリーは自身と同じような状況にいる人々にエールを送っています ―― 既知のこと、すぐ目の前にあることに集中すること。恐怖や不安に囚われて、空想のシナリオに夢中になってはいけない、と。

 

「問題は細かく分割して、一個ずつ着実に解決していきましょう。いきなり全体を考えようとすると圧倒されて、今という瞬間から心が離れてしまうからです。今現在にフォーカスしましょう。私が今わかっていることは、自分が生きているということ、治療してくれる素晴らしいチームがいるということ、そして私が抱えている問題はきっと解決できるということです。」

 

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The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

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