海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

リンカーンの希望

2022年11月21日

 

生まれたばかりのリンカーンには、ピエール・ロバン・シーケンス(小顎症、口蓋裂、舌下垂)の特徴がみられました。さらに、両目は斜視で、透き通るような柔らかい皮膚、足の指は長く、親指は内側を向いていました。口蓋裂があったことから遺伝的素因を疑われ、遺伝専門医に紹介されることに。口蓋裂に関わる通常の遺伝子検査を受けたものの、結果は全て陰性。医師からは、より精密な遺伝子検査の選択肢もある、と言われました。リンカーンと私達夫婦の染色体を比較して違いを調べる、という検査でしたが、かなりの高額で、しかもほとんどの場合、結果は陰性であるとのこと。これまでの診断は、得体のしれない大きなパズルのごくわずかなピースでしかない、という思いを抑えることができず、この検査を受ける選択をしました。その結果、TGBFBR-2遺伝子の変異が見つかりました。私達夫婦には存在しない変異でした。やっと正解にたどり着いたのです。遺伝子変異と全ての症状、診断所見から、リンカーンはロイス・ディーツ症候群であることが確定しました。

 

生後12ヶ月でロイス・ディーツ症候群と診断されたリンカーンでしたが、私達夫婦と医療者からの第一声は、「ロイス・ディーツ症候群って何?治療はどうするの?」というものでした。「マルファン症候群みたいな感じでしょ」という少数意見もありました。LDSFのYouTubeチャンネルで前回総会のレクチャーを視聴し、マルファン症候群との共通点もある、でも、それだけではないことがすぐにわかりました。

 

レクチャーからわかったことは、ロイス・ディーツ症候群では、マルファン症候群よりも小さな大動脈径で解離や破裂を起こすということ、消化器系の疾患、アレルギー、骨格系の問題があるということでした。親ならば、子どもにできる限り健康な状態でいてもらうために、できることは全てしてあげたいと思うもの。息子の診断を知ったときは呆然としましたが、治療に携わる医療者に対しては、ロイス・ディーツ症候群に関する教育と、最新情報を得られる場所についての情報提供が必要であると感じました。

 

小児科の主治医にはガイドラインのコピーを渡しました。この主治医はロイス・ディーツ症候群のことを耳にしたことがありませんでしたが、このガイドラインに基づいて、息子の治療を進められるようになりました。また、循環器の主治医には薬の正しい服用量について相談し、ロイス・ディーツ症候群の患者では高用量の服用が必要である理由を伝えました。ロイス・ディーツ症候群2型の一般的な所見と稀な所見について読んだおかげで、いくぶん不安は和らぎました。研究結果にアクセスできるということは、注意を要することや懸念すべきことを意識できるということでもあります。

 

2005年にロイス・ディーツ症候群が初めて説明されるようになって以降、この病気や患者への影響、そして、より長く、より充実した人生を歩むための方法についての理解は大きく前進しました。適切な運動や大動脈の拡張を抑えたり、拡張速度を緩やかにする薬についてもわかっています。この病気に関する新たなバイオマーカーを探る最新研究が進行中です。経過観察や治療のための新たな手法を目にすることになるかもしれません。

 

日々ロイス・ディーツ症候群の家族を苦しめている多くの疑問への回答を見つけ出そうと、日夜取り組んでおられる皆様に感謝申し上げます。ロイス・ディーツ症候群コミュニティの将来が明るく、希望に満ちているのは、こうした素晴らしい方々の献身のおかげです。リンカーンが健康でいられるのは、こうした目覚ましい研究があればこそなのです。

 

― ジュリー・ハーヴァティン リンカーンの母

 

出典:

www.loeysdietz.org

 

The Loeys-Dietz Syndrome Foundation, a division of The Marfan Foundation, did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, loeysdietz.org.

The Marfan Foundation の一部局である The Loeys-Dietz Syndrome Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、 loeysdietz.org にアクセスしてください。