海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

マルファン症候群:息子のアスリート人生を変えたもの

2018年2月20日
Rita McCrerey

 

マルファン症候群やその関連疾患は、アスリート、特に一連の典型的な所見がない場合では、見落とされることがあります。

 

息子のニック・ボーゲルのお話をさせてください。サンディエゴ育ち、6.9フィート(2.10メートル)で高校、大学(UCLA 2008~2012)とバレーを続け、ギリシャとドイツでプロバレーボール選手として活躍、全米男子代表チームのメンバーにも選ばれました。

 

身長を除けば息子には外見上目立ったマルファン症候群の特徴はありませんでした。クラブチームや大学のチームに所属するバレーボール選手全員にマルファン症候群の予備検査が行われますが、身長以外にそれといった特徴のない十代後半の息子は精密検査の適用とはならず、経済的な面からも気軽に受けられるものではありませんでした。バレーボールの世界では背が高いことはごく普通のことです。

 

ニックの大動脈に異常が見つかったのは、バレーボール全米代表チームのチームドクターが行う心エコーの定期検査を受けた時でした。この知らせはドイツのクラブチームであるフリードリヒスハーフェンでプレー中の息子に電話で伝えられました。同時に激しい運動は直ちに止めるよう指示を受けたのです。

 

「それはもう、地球が粉々になるほどショックでした。だって人生を捧げてきたバレーをすぐにやめろって言われたんですから。でも、周囲の素晴らしいサポート体制のおかげで立ち直るのはそれほど難しくありませんでした。僕は家庭で感情知能(自分の感情を知覚し、コントロールする能力)についての教育を受けていました。僕の家族はあの時のような極端なケースにも対応できる手段を与えてくれていたんです。苦しくて途方に暮れました。でも、目標を再設定して新しいチャンスに目を向けることで、いつだって次のステップに進む気力が湧いてくるんですよ。」

 

ニックはチームメイトと一緒のコートに立つことはできなくなりましたが、ドイツのブンデスリーガチャンピオンシップまでの残りのシーズン、帰国することなく脇役としてチームを支え、ドイツ杯優勝へとつなげることができたのです。

 

その後数週間、遺伝子配列検査を行えばニックのFBN1遺伝子に変異が見つかったと思います。(命を救う心エコーを定期検査として導入していただいた、バレーボール全米代表チームのジョン・スペローヘッドコーチとチームドクターのポール・グロスフェルド医師には感謝申し上げます。)ニックは、2015年、25歳で正式にバレーボール選手を引退しました。

 

グロスフェルド医師をはじめとし、マルファン症候群の啓発活動に携わり熱心に研究をしていただいている皆さんにはどれだけ感謝しても感謝しきれません。僕の病気が見落とされる可能性もあったわけですから。もしそうなっていたら、取り返しのつかないことになっていたと思います」とニックは話してくれました。

 

ニックはその後、部活動や大学などでバレーを教え、個人指導も行っています。健康維持に関しては、決められたことをしっかりと守り、薬を飲んだり、医師が認めた運動を行ったりしています。さらに、定期的に通院して全身の検査を受け、将来の大動脈再建手術に備えています。バレーボールの世界でマルファン症候群あるいは関連疾患に罹患しいる可能性のある選手やその家族への啓発活動や教育、支援を行うことがニックにとっての使命となりました。その目的を達成するため、高校やクラブチーム、大学コーチや選手、その家族に会い、学習教材を提供したり、検査を受けることを勧めています。また、サウスウエストで開催されるバレーボールの大会では、啓発ブースを設置しています。

 

マルファン症候群あるいは関連疾患と診断され、アスリート人生の見直しを余儀なくされた方や、スポーツ選手としての道を完全に絶たれてしまった方へ、ニックからメッセージがあります。

 

「まず、皆さんに伝えたいことは、これまで歩んできたアスリートとしての人生は、自分というもののほんの一部分でしかなく、自分の人生そのものではないということです。そして、アスリートとして培った多くのスキルは他の人生を歩んだとしても、きっと成功に導いてくれます。一般的な人生を歩んだ人々が、自らに欠けていると思うものの多くは、突き進む力や競争心など、スポーツに相通じるものがあります。星の数ほどある、皆さんが関心をお持ちの世界でもこれらの特性を活かすことができますし、これまでのアスリート経験は別の世界でも活躍できることを約束してくれているんです。」

 

Rita McCrereyさんについて


ニックの母親でサンディエゴ出身。臨床ソーシャルワーカーの資格を持ち、サンディエゴ周辺で40年にわたり救急病院での勤務やリハビリテーション、在宅介護、ホスピスに関する各プログラムや教会での活動に従事、個人を対象とした支援にも携わる。100歳の母親の介護も行っている。ニック同様、マルファン症候群や関連疾患の教育や啓発活動に熱心に取り組んでいる。

 

出典:http://blog.marfan.org/marfan-diagnosis-a-game-changer

 

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