2017年8月26日
Barbara Miller
どんなに食べても太れない―どんなにプロテインシェイクを飲んでも、胃がむかつくだけ―10代前半ではさほどではありませんでしたが、思春期に突入すると言葉によるいじめが激しくなりました。健康上の問題はありませんでした。でも皆は私のことを栄養失調だと思っていました。自分と同じように細くて背が高い友達を目で追っていたのを思い出します。私達はお互いに引き寄せられていきました。一緒にいれば、いじめられたり、けなされたりすることはなかったからです。
10代の頃、母から運動を勧められました。腕や脚が長くて真っ直ぐで、扁平足でした。母からサドルシューズを履かされました。重くて大嫌いで、歩く時に何度も転んだのを覚えています。そんなバカでかくて格好悪い靴から、ソックスを履いた細くて不格好な脚が突き出しているのです。とうとう最後には、「白のバックスキンの靴を買って」と母を説得しました。私はワクワクしていました。なぜなら、靴とソックスがおそろいになると思ったからです。当時『Dick Clear Show』に出演していた女の子たちが、靴とソックスに色とりどりのプードルスカートを合わせていたのです。―これで私もオシャレになれる。1950年代、女性や女の子はソックスやストッキングを履いていました。素脚のまま外出することは考えられない時代でした。
腕の筋肉が付くようになったのは、片手で持てるくらいの軽めのウェートでトレーニングをするようになってからです。定期的に運動できるくらいのスタミナはありませんでした。私にはきつすぎたのです。他人が当たり前に持っているものを、私は努力して手に入れなければならない―なぜ?どうして?
このような経験のある私が支えてあげれば、マルファン体型の息子でもそれほど問題を抱えることなく生きていけると思っていました。ですが、私が浅はかでした。私と同様、息子は刺すような視線や中傷を浴びせられることになったのです。中学、高校といじめに合い、頭の形から「ピーナッツ」というあだ名をつけられました。脚が長かった息子は、同年代の男の子達が履くような流行りのズボンを履くことはできませんでした。大学では、痩せ過ぎていたせいで「お前エイズか?」と訊かれることもあったようです。若い男の子がクラブに通うように、息子は自分を受け入れてくれる存在を探していたのです。そして、一緒にお酒を飲んでダンスを踊ってくれる女の子を求めていたのです。息子のジェームスはダンスが大好きでした。
あからさまに発せられた心無い悪意を経験させたくない―私と同様、息子も結婚を考えてはいないようでした。その点は間違いだったと思っています。残酷な視線や心無い言動を浴びた人間は自分を閉ざし、他の人間や集団でいるような状況を避けるようになっていきます。孤独になれば傷つかずに済む―私達はそう信じています。でもそれは間違いです。「寂しい」「愛されたい」「気にかけて欲しい」という願望は奈落ように暗く深く、そこから這い上がることは難しいのです。
マルファン体型とともに45年という短い生涯を送り、2016年12月18日に旅立った一人息子の人生を振り返る時、どうすべきだったのだろうと考え続けているのです。
- マルファン症候群の患者会を探してあげればよかった(特に10代の頃)。そうすれば、同じような経験を持つ仲間ができたかもしれない。
- 男子も女子と同じような夢があるということ、自分を愛してくれて、あるがままの自分を受け入れてくれる友達が欲しかったのだということをわかってあげればよかった。(息子は6フィート7インチ(約2m)で、やせ型、分厚いメガネをかけていました)
- もっと息子と話をすればよかった。口数が少なかったせいで、息子は苦しむことになりました。自分の殻から出してあげればよかった。
- 女子だけではなく男子も、恋人を作って幸せに暮らすという映画やテレビ番組を見るのだということをわかっていればよかった。
- 他にもジェームズの幸せにつながるものを見つけてあげたかった。
- もっと早く気づいてあげたかった、でももう遅すぎるのです。
Barbara Millerさんについて
1940年代半ば、マルファン症候群の早期診断を受ける。 13人きょうだいの12番目で、唯一のマルファン患者。視覚障害者向けの教育を受け、タッチタイピングを習得。そのスキルを活かし、コンピュータトレーナーコンサルタント、ワシントンDCにあるAFL-CIOの事務アシスタントとしてのキャリアを歩む。現在は退職し、フロリダ州フォートマイヤーズ在住。マルファン・ライティング・グループのメンバー。
出典:
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