海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

GenTAC大動脈サミットからの主要報告

Roanne Weisman、The Marfan Foundationボランティアライティングチーム

 

GenTAC会長のKim Eagle医師(ミシガン大学)とThe Marfan Foundation最高科学責任者であるJosephine Grima博士は、2020年11月、The Marfan Foundationの新設部門であるGenTAC Allianceによる主要研究を共有した。

 

主要研究は、今秋開催されたGenTAC大動脈サミット(The Marfan Foundation主催の国際科学会議)で発表された。会議では世界中の研究者らが、遺伝性胸部大動脈疾患および関連疾患のリスク・診断・予防・治療に関する最新の科学的エビデンスについてのプレゼンテーションを行った。

 

研究者らは、医師らが情報に基づいたより優れた決定ができるよう、引き続きデータ解析を行いトレンドの把握に取り組む。大動脈瘤や大動脈解離の原因となる遺伝子変異に関しては多くがわかってきたものの、依然として解明すべきことは多い。家族性大動脈瘤の原因遺伝子に関する最新の研究では、それらの遺伝子により平滑筋収縮が阻害される機序、および同遺伝子により大動脈外壁を支持するマトリックス(骨組み)全体が損傷する機序の解明が進行中だ。また、科学者らは、より患者に即した適切な管理をサポートできるよう、遺伝子変異に基づき患者のアウトカムを収集している。

 

我々のコミュニティに属する多くの人々は、大動脈を保護するためには何ができるかを知りたがっている。回答は患者により異なるということで研究者の意見は一致している。病変の型、家族歴、職業、大動脈のサイズや状態、患者の目標や患者が恐れていること、患者が喜びとするところによって回答は変化するためだ。「担当の医療従事者らと連携し、最適な運動やリスクを避ける方法についての指針や、人生を全うするために必要な自信を与えてもらってほしい」というのが、彼らからのアドバイスだ。

 

負担の少ない軽度の有酸素運動により、大動脈における有害な経時的変化を抑えられそうなことが、ある研究から判明した。また、ウォームアップやクールダウンを行うこと、そして重いものを持ち上げるといったことに起因する等尺的かつ即時的な大動脈への負荷を避けることも重要だ。

 

マルファンマウスに対するフルオロキノロン(抗菌薬の一種)の影響も、研究者らの研究テーマの一つとなっている。確立されたマウスモデルを使った研究は、大動脈が拡張していたり、動脈瘤や解離のリスクのある患者ではフルオロキノロンを避けることを支持している。ヒトを対象とした研究では、この抗菌薬により、大動脈と類似した構造をもつ靱帯の断裂リスクがわずかに上昇することがわかっている。こうした抗菌薬の使用により、大動脈の裂傷が生じる可能性は低いものの、リスクが高まる可能性がある。故に結合組織疾患の患者では、可能な限りフルオロキノロンを避けることが推奨される。

 

カルシウムチャネル拮抗薬についても、マルファンマウスで大動脈拡張の増強がみられることから、リスクがあると考えられる。B型解離の患者に対して、データからカルシウムチャネル拮抗薬の有効性が示唆されるものの、マルファン症候群およびその他の遺伝性大動脈疾患の患者では投与に注意を要する。

 

遺伝性動脈瘤の遺伝子変異がみられる女性からは、妊娠時における上行大動脈の解離リスクについての質問が多く寄せられる。最新の研究では、大動脈径が4cm以上の女性の場合、解離のリスクがあることから、妊娠によるリスクについてカウンセリングを受けるべきだろう。場合によっては、妊娠前に予防的に上行大動脈を置換することも可能である。また、出産後のホルモン変化も大動脈全体に影響を与える可能性がある。しかし、複数の研究により、分娩後に(下行大動脈に生じる)B型解離を頻回発症し、しかも予測不能であることが示されている。

 

大動脈解離のリスクがある場合、大動脈の緊急手術を回避できるよう、手段を講じるべきである。心臓外科医と話し合っておくべき項目は、大動脈のサイズ、大動脈壁にかかるストレス、血流、大動脈の厚さ、小さな大動脈径で大動脈解離を発症した家族がいるかどうか、などである。過去20年間以上にわたり、大動脈置換についての判断には変動がみられ、医学的知見は発展を続けている。上行大動脈瘤の手術タイミングを決める主要な計測値は、依然として大動脈径であるが、新たな測定法や分析法に加え、外科的アウトカムが改善することで、外科的介入の時期に関する正確な予測ができるかもしれない。

 

The Marfan Foundationは引き続き研究にコミットし、世界中の科学コミュニティーを一つにまとめながら、遺伝性結合組織疾患に関する知見を発展させていく。GenTACとの連携を通じて、同団体の影響は全世界に広がっており、MFS・LDS・VEDSコミュニティにおけるアウトカムの改善をもたらす研究を促す機会は増加している。

 

出典:

Connect Issues Winter 2021 user-35215390377.cld.bz

 

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