海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

ティーンとマルファン症候群

 

はじめに

 

もしあなたが最近マルファン症候群と診断された、あるいは何年も前からそうだと思っていたのであれば、何百という思いや疑問、不安が頭の中を駆け巡っていることでしょう。学ぶべき新たな医学情報の世界は広がる一方で、あなたは10代の人生を歩まねばなりません。

 

その道中、あなたの助けとなる情報はたくさん用意されています。The Marfan Foundation のウェブサイトには、総合的な医療情報が掲載されています。ティーンの皆さんの疑問に答えたり、勇気を与えてくれる仲間にスポットライトをあてる「ティーンスペース」というコーナーもあります。

 

この冊子では、10代の皆さんが共通して抱える質問に真正面から答えます。ですから不安に思う必要はありません。他に疑問があれば、私達のコミュニティが答えてくれます。同じ経験、同じ感情、同じ困難を乗り越えた仲間がいつも話し相手になってくれます。

 

マルファン症候群であるということは、自分のほんの一部分でしかない ―多くの人と同様、あなたにも気付いてほしい。マルファン症候群だからといって自分が決まってしまうわけではないのです。これからどんな病気の困難が待ち受けていようとも、この気付きが充実した人生を送る助けとなります。

 

最後になりますが、自分にできることを時間をかけて学ぶ重要性を伝えきることはできません。マルファン症候群や関連疾患と共に生きる人々に質問をぶつけ、話してみてください。あなたは独りではありません。診断はどうあれ、あなたには明るい未来が待っているのです。

 

家族について

 

家族の中でマルファン症候群の診断を受けたのがあなた一人だとしても、家族全体に影響が及ぶことになります。あなたの状況や抱えている問題に対する家族の反応は一人一人違っています。以下に例をあげます。

  • マルファン症候群の子供が、病気を遺伝させた親に腹を立てる。あるいは、自分が家族で唯一の患者である場合、両親に原因があると誤解し腹を立てる。

  • マルファン症候群の子供が、マルファン症候群ではないきょうだいを羨ましく思う。

  • マルファン症候群ではない子供が、特別に注目を集めるマルファン症候群のきょうだいにやきもちを焼く。

  • マルファン症候群の子供が、両親が許可を得ずに親戚や友人らに病気の情報を伝えることに動揺する。

  • マルファン症候群の子供が、薬の飲み忘れや、してはいけない運動について両親が絶えず口出ししたり、過保護になることに腹を立てる。

  • マルファン症候群の子供が、病気のことを深く理解させまいとする両親に腹を立てる。

  • 両親がマルファン症候群の診断に困惑し、病気について話すことや対応の仕方に苦慮する。

 

以上の項目について家庭内で心当たりがあるとしても、まったく自然なことですので心配する必要はありません。家庭内でストレスを感じる場合は、両親やきょうだいに打ち明けることで解消できることが多いものです。

 

家族が落ち着いている時に自分の思いや感情を伝えてみましょう。そうすることで打ち解けて会話をすることができます。このことが得意なご家族もいます。両親が落ち着いて聞いてくれない時には、おじさんやおばさん、おじいちゃんやおばあちゃん、牧師さんや宗教の先生、医師やカウンセラーが手を差し伸べてくれるかもしれません。思っていることを自分の中に閉じ込めておいたほうが楽だと思うかもしれません。でも、誰かに話してみることで対処しやすくなります。

 

友達に伝える

 

あなたはマルファン症候群そのものではありません。マルファン症候群はあなたの一部分であり、そのことが自分の考え方や行動に影響を与えることがあります。もしあなたがベジタリアンだったり、カントリーミュージックのファンなら、友達にそのことを伝えたくなると思います。これと同じように自分の一部であるマルファンのことを伝えてみてはいかがでしょうか?恥ずかしいことでありませんし、マルファンだからといって自分が決められてしまうわけではありません。糖尿病やグルテンアレルギーをもつ10代の仲間達と同じように、マルファンと付き合っていけばいいのです。あなたの病気のことを友達が深く理解すればするほど、支援の輪は広がっていきます。友達と過ごす時間が大半だと思いますので、どのような場合が緊急事態なのかを知っておいてもらいましょう。そうしておけば、何かあったときにすぐに助けを呼ぶことができます。

 

友達に伝えるといっても、自分の病気について根ほり葉ほり伝える必要はありません。はじめは基本的なことだけを伝えましょう。質問されたら答えられるようにしておけばいいのです。中には怖くなって質問できなくなったり、上手く会話できなくなる友達もいるかも知れません。何かあった場合には、あなたやあなたの家族が最優先に治療を受けなければならないということ、マルファン症候群に関係する他の病気にならないよう、できる限りのことはしているということ、そしてあなたがこれからずっと続いていく豊かな人生を楽しんでいるということを友達に伝え、安心させてあげましょう。

 

医師との関係

 

10代は親に管理してもらう時期から自分で自分を管理する時期への移行期間です。この時期はご両親だけでなく、あなたにとっても辛い時期かもしれません。いつまでも親のいいつけに従うわけにはいきませんので、担当医と良好な関係を築き、安心して会話や質問ができるようにしておきましょう。

 

両親があなたの病気に積極的に関わろうとする場合、それが親心というものだということを理解しておいてください。落ち着いて冷静に、自分一人で生活していくための第一歩として、自分のことは自分で管理したい、ということを伝えましょう。自分が担当医との会話をリードできるようになるまでは、親の意見に耳を傾けるようにしてください。

 

自分が自立していることを冷静に伝える方法の1つは、担当医と一対一の時間を持てるよう両親にお願いすることです。こうすることで、担当医との新しい関係が生まれ、あなたを大人として扱ってくれるようになります。受診の前には質問したいことをメモしておき、責任感があるという姿勢を見せるようにします。担当医からの回答を確実に理解できるようにしましょう(回答はメモしましょう)。回答が理解できない場合には、きちんと理解できるように説明してもらってください。自分の病状、医学的アプローチ、推奨されている治療法を理解する権利があなたにはあります。理解することを通じてのみ、自分自身の良き理解者となることができるのです。

 

外見について

 

完璧な外見でないからといって、イライラしていませんか?あなただけではありませんよ。誰だって ―10代の若者であれ、大人であれ― 少なくとも2~3ヶ所は外見上変えたい部分があります。マルファン症候群や関連疾患だから、というわけではありません。

 

鳩胸などは手術で治せる場合があります。歯並びも矯正歯科で治療できます。分厚いメガネをコンタクトレンズに変えることもできます。担当医に自分の意見を伝え、外見を改善する手術をしても問題がないか相談してみましょう。

 

マルファン症候群あるいは関連疾患の身体的な特徴の中には、簡単には変えたり隠したりできないものがあります。皮膚のストレッチマークにはお困りかもしれませんが、消したり、予防したりすることはできません。幸いなことに、ストレッチマークで問題が起きたり、痛みが出ることはありませんし、時が経てば薄くなっていく傾向があります。

 

背が高くて痩せているのであれば、マルファン症候群や関連疾患の10代に多くの仲間がいます。でも自分でできることはそれほどないかもしれません。マルファン症候群ではなかなか体重が増えませんが、その理由については医師も分かっていません。理想の体重にしてくれたり、欲しい筋肉を付けてくれるような、特別な食事やサプリメント、運動プログラムはありません。

 

体型のせいで目立ってしまい、嫌な気分になりますね。ですが、みんなから摂食障害だと思われることのほうが大変かもしれません。摂食障害は広く認知されていますが、マルファン症候群やその関連疾患についてはあまり知られていません。この機会を利用して周りの人に病気のことを知ってもらいましょう。長い目で見ればあなたにとっての利益にもなります。

 

タトゥとボディピアス

 

タトゥを入れたりボディピアスをしてもいいかと疑問に思うこともあるでしょう。マルファン症候群や関連疾患の患者さんの場合、感染症のリスクがあるためおすすめできません。細菌が血流へと入り込むと、心臓の弁で感染症を引き起こす可能性があり、こうなると治療は非常に難しくなります。長期間に及ぶ抗生物質の服用と、さらに心臓の手術が必要になることもあります。タトゥやボディピアスについては、担当医に自分の病状を説明した上で相談してください。行う方向で話が進んだ場合には、殺菌済みの器具のみを使用する、定評のある施術者を見つけましょう。

 

タトゥを入れたりボディピアスをしてもいいのかと疑問に思うこともあるでしょう。マルファン症候群や関連疾患の方の場合、感染症のリスクがあるためおすすめできません。細菌が血流へと入り込むと、心臓の弁で感染症を引き起こす可能性があり、こうなると治療は非常に難しくなります。長期間に及ぶ抗生物質の服用と、さらに心臓の手術が必要になることもあります。タトゥやボディピアスについては、担当医に自分の病状を説明した上で相談してください。行う方向で話が進んだ場合には、殺菌済みの器具のみを使用する、定評のある施術者を見つけましょう。 

 

運動について

 

マルファン症候群や関連疾患の患者さんは、行う運動の程度や種類を変えることが重要です。眼や骨、関節に加え、心臓や血管を守ることにもつながるからです。診断される前に積極的に運動をしていた人にとっては、人生における大きな変化となる可能性があります。運動制限の理由を理解することで受け入れやすくなり、新しく運動に取り組む方法を見つけやすくなります。

 

一般的に、競争闘争心を燃やすようなスポーツは避けるべきです。非常に過酷で、血圧や心拍が上昇するような状況に遭遇しないようにするためです。また、避けられない衝突によって眼や骨、関節を損傷しないようにするため、接触を伴うようなスポーツも避けるべきです。

 

一般的に、競うスポーツは避けるべきです。非常に過酷で、血圧や心拍が上昇するような状況に遭遇しないようにするためです。また、必然的に生じるぶつかり合いによって、眼や骨、関節を損傷しないようにするため、接触を伴うようなスポーツも避けるべきです。

 

よいお知らせもあります。運動することは問題ありません。というよりも運動すべきです。例えば、自転車に乗っても構いません。ですが、競争は避けてください。勝敗をかけたバスケットボールの試合は、心臓や血管に大きな負担をかけますが、私道や体育館で娯楽として楽しむのであれば問題ありません。運動の激しさを測る目安ですが、運動中に心拍数を数え、1分間に100回未満となるようにしましょう。また、運動中、呼吸を挟むことなく短い会話ができるということも目安になります。

 

娯楽の他、身体を使う仕事でも安全を気に掛ける必要があります。安全でやりがいのある仕事を見つけるのは大変かもしれませんが、仕事や娯楽で新たな分野を探求する機会にもなります。

 

性的活動も心拍数を上げますので、時間や程度については同様の配慮が必要になります。心臓の負担について不安がある場合は、主治医に相談しましょう。

 

覚えておいてほしいのは、このガイドラインではごく一般的な事柄についてしか書かれていないということです。運動に関しては主治医と相談し、その運動が自分にとって安全であることを確認してください。

 

学校生活について

 

10代であれば病気があろうがなかろうが、中学校や高校でハードルが待ち構えています。とはいえ、マルファンだということで余計なストレスを感じることもあるかもしれません。以下に起こりうる問題の例をあげます。

 

  • 緊急処置が必要な事態が発生した際、学校関係者がどうしたらいいかわからなくなる。

  • 体育教師が授業内容の変更が必要なことを把握できておらず、マルファン症候群の生徒に適したにカリキュラムに変更しない。

  • 両親と学校が協力して、障害をもつ生徒に対する(法律で定められる)特別な措置を実施する必要があることもある。

  • 教師とお願いをして、治療で欠席したために受けられなかった授業内容の補填をする。

  • クラスメートなどからいじめられたり、否定的な態度を取られることがある。両親や校長らと協力して対応に当たる必要がある。

生徒に対して特別な措置をどれほど実施できるかは学区によって差があります。家族と同様、上手く対応してくれる学校もあります。

 

まず第一歩として、学校に医療情報を提供し、教師や養護教諭とその情報を共有しましょう。教師や養護教諭向けの資料はMarfan.orgでダウンロードできます。教師らが病状や症状を理解できれば、可能な限りの支援や手助けをしてくれます。

 

体育について

 

マルファン症候群では運動することが重要になります。全く体育の授業に参加しないのではなく、安全に参加できる方法を考えたほうがいいでしょう。体育の教員にお願いして学期中に予定されている授業内容の一覧を見せてもらってください。それを医師に見せ、避けるべき項目や、ゆったりとしたペースで行う必要のある項目を選んでもらいましょう(これができる医師に相談しましょう)。体育の授業中には脈拍を測り、1分間に100回未満に抑えるようにしましょう。クリエーティブでフレキシブルな体育の先生でれば、授業に参加させてもらえます。The Marfan Foundation のウェブサイトでは、運動に関するガイドラインをダウンロードできますので、体育の先生にも見せましょう。

 

勉強について

 

マルファン症候群は知能に影響しませんが、身体的な問題がある場合には、生徒が最大限に能力を活かせるよう配慮が必要となることもあります。障害があったり、特別な配慮を必要とする生徒を支援するため、学校が守るべき連邦法は調べることができます。特別な配慮は健康上の問題あるいは学習に関連したものであり、学校側には生徒に対し、法律上「妥当な配慮」と呼ばれる特別な努力が要求されます。法律や権利について理解しているご家庭では、必要なサービスを要求しやすくなります。

 

以下にマルファン症候群の生徒に対する学校での配慮で、役立つものを挙げます。

 

  • 低い視力をカバーするため、教室の前の席に座る。

  • 教科書を2組用意し、1組を家に置いたままにする。

  • 服用している薬の影響で疲労感が強い場合には、いつでも保健室に行ってよいことにする。

 

手術の予定がある場合には前もって学校に連絡し、その後の対応をしてもらいやすくしましょう。急な体調不良で3日以上欠席する場合は、直ちに担任に連絡して状況を説明し、学業に支障が出ないようにしてください。

 

いじめについて

 

マルファン症候群の影響で、クラスメートと外見が異なることがあります。いじめられたり、からかわれたりした場合は学校管理者(校長あるいは教育委員会)に知らせましょう。いじめの多くは無知によるものです。自分の病気について他の生徒に理解してもらうことが自分にとっての利益になります。担任の先生やスクールカウンセラーに相談し、あなたがクラスで自分の病気についてのプレゼンテーションを行う際にサポートしてもらえるかどうか確認しましょう。覚悟を決めることでパワーが溢れてきます。そうなれば、クラスメート達は外見の違いを短所ではなく長所と捉えるようになります。

 

将来について

 

将来のことが心配ではありませんか?病気のあるなしに関わらず、将来のことは10代に共通する悩みです。進学する大学や就く仕事、目指すキャリアなど、自分の長所と短所を基に事前に考え、計画しておくことが成功の秘訣です。

 

キャリアについて

 

何をしているときが楽しいですか?絵を描いているとき?お金を数えているとき?文章を書いているとき?コンピュータをいじっているとき?こうした分野に限らず、成功するチャンスはたくさん用意されています。建設現場での仕事のように身体に負担をかける仕事やものを持ち上げる仕事など、やってはいけない(やるべきでない)仕事もあります。また、軍隊や警察、消防の訓練などは、プロスポーツ選手と同様に身体を酷使します。

 

The Marfan Foundation のメンバーである10代の若者の多くは、マルファン症候群の治療に精通した医師への通いやすさを基準に、進学する大学を決めています。この条件があなたもしくはあなたのご家族にも同様に当てはまるのであれば、米国の各地にマルファン症候群の専門医がおりますので、ご希望に沿うことは可能です。

 

出産について

 

親になることが重要ということならば、子供をつくらない理由はありません。ですが妊娠前あるいは養子縁組といった別の選択肢を選ぶ前に、あなた、あなたのパートナー、遺伝カウンセラーとで話し合っておくべき重要な事柄があります。

 

親の一方がマルファン症候群である場合、子供には50%の確率で遺伝します。これはマルファン症候群である親や子供の性別には無関係です。遺伝した場合の症状は、親の症状よりも軽度のこともあれば、重度となることもあります。これを受け入れるかどうかを決断できるのは、あなたとあなたのパートナーだけです。遺伝学者や遺伝カウンセラーに相談しておくことで、子供の出生時や成長過程で必要なケアについて理解しやすくなります。また、こうした専門家は子供をつくる決断をする上で、出生前診断がどう役立つのかについての説明もしてくれます。

 

支援ネットワークについて

 

マルファン症候群や関連疾患のコミュニティは非常に特別な存在です。あらゆる年齢層の方がいらっしゃいますので、質問したり、不安を解消したり、サポートを得ることができます。手術が必要ということであれば、過去に同じような手術を受けた人を見つけることができます。独りだけで何かしようとする必要はありません。それがコミュニティの一員ということです。聞いてみたいことや共有したいお話があると思います。あなたは他の方の体験から利益を得ることができますし、あなたの体験から利益を得られる人はどこにでもいるのです。

 

マルファン症候群のコミュニティとつながるには、毎年開かれる家族総会(ティーン向けプログラム含む)やオンラインディスカッションに参加する方法や。メールを送りたいティーンの名前をこちらからお伝えしたり、お住いの地域にあるグループに参加する方法があります。

 

 

出典:

https://marfan.org/wp-content/uploads/2021/01/Teen_Resource.pdf

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

The Marfan Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、Marfan.orgにアクセスし、当協会の専門家から成る諮問委員会が承認した内容をご参照ください。