海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

マルファン地球旅

2018年10月22日
Dawn Knowles

 

私は常に新しい場所を散策することを夢見てきました。旅の空想の中では、私の身体は丈夫で自由に動き、やりたいことは何でもできるのです。でもこれは現実とは異なります。

 

私にとっての現実は、マルファン症候群による不自由との共同生活です。ですが、生きている、ということが私には最も大切なことです。22年前に大動脈解離を発症してからは、一瞬たりとも無駄にするものかと思って生きてきました。数年前、夫に「一緒にアメリカの全ての州を見て回りたい」と打ち明けました。そしてアメリカの全50州をリストにして、訪れた場所にはチェックマークを付けていき、全ての州に印が付くことをゴールにしたのです。

 

初めて旅行に出発する前には、病気のせいでできないことをあれこれ調べ、夫の足を引っ張ってしまうのでは、と不安になりました。これまでに訪れたのは18州ですから、残り32州です。障がいを抱えての旅行からは、教訓や困難、見直すべき項目などが見えてきました。

 

ポジティブであることは、いつだって素晴らしい出発点になります。旅から得られた教訓は以下の通りです。

 

  • 旅は与えられた人生や不自由さなど諸々のことを受け入れ、人生を喜びで満たすためのひとつの方法だということ

  • 旅行は楽しみを与えてくれるということ
    痛みや疲れでどうにもならなくなった日には、行きたい場所やそこで見たいものを検索することができます。

  • 旅行のおかげで健康が保てるということ
    痛みのせいで気分が滅入るってしまいますが、近所を散歩することで旅行で歩きやすくなるということがわかって、モチベーションが高まります。

  • 旅行中は家事をしなくてもいいということ
    全エネルギーを旅行に投入でき、新しい場所を訪れることで家にいる時よりも痛みが和らぐことがあります。

  • 「今を生きる」を実感できるということ
    初めて旅行に行った時、「家に帰っても、今のままの2人でいられたらいいわね」と夫に話したことがあります。旅で見つけた楽しさや、何気なくとった行動、面白い出来事などは最高のお土産です。

 

旅では困難もありましたが、克服できないわけではありません。

 

  • 目的地がどこであろうと、もしもの時の備えはしていきます。事前に旅行先周辺の救急病院を調べておいたり、十分な量の薬を持っていくようにします。ハワイでは、血をサラサラにする薬の量が適切かを調べるために、病院を探さなければなりませんでした。

  • 旅行について主治医と定期的に相談し、避けた方がいいことを教えてもらっています。知識を得ながら存分に人生を楽しむ方法がわかるので、勇気づけられます。

 

自分の体を守るため、旅行ルールの見直しも行っています。

 

  • 旅行前には下調べ
    行ける場所を探して、身体的な要件などをメモし、当日に自分の体が持ちこたえられるのかを検討します

  • 優先順位を決める
    私には、一緒に過ごす時間こそが一番大切ということを思い出させてくれる、素晴らしい夫がいます。臨機応変に対応できるようにするということが私達夫婦には最も重要なことです。旅行でしたいことは決めておきますが、あまりそれにはこだわらないようにします。旅がどのような形で終わるにせよ、私達の主な目標は達成できることが分かっているからです。体を休めるのために丸一日棒に振ったとしても、目標は達成できます。その上で、本当に行きたい場所はどこで、必ずしも行く必要のない場所はどこかを事前に決めておけばいいのです。

  • ペース配分する
    自然保護区にどうしても行きたい場合には、前日と翌日は軽めで、のんびりとしたスケジュールにします。

  • 落胆することも予定に入れておく
    前回の旅行では、滝までゆっくりとハイキングしたかったのですが、当時はひざの手術を受けてから6週目でした。ハイキングの許可はもらっていたものの、自分には負担が大きすぎることは明らかでしたので、泣く泣く車で行ける小川を見つけて、冷たく透き通った水に足を浸すだけにしました。

  • 最後に
    旅行前後には休日を設定する。

 

私にとっての旅行は、友人達とは違うかもしれませんが、それでいいのです。一日の予定を詰め込むことはないかもしれませんし、多くのものを目にすることはできないかもしれません。現代哲学者のアラン・ド・ボトンが私の気持ちをぴったり言い表してくれています―「旅の喜びは目的地で決まるのではない。心の有り様で決まるのだ」

 

Dawn Knowlesさんについて

The Marfan Foundationのライティンググループのメンバーで、21歳でマルファン症候群の診断を受ける。28歳で大動脈解離を発症。執筆活動やビーチを愛し、夫のリックや成人した子供、2人の可愛い孫たちと過ごす時間をとりわけ大切にしている。

 

出典:

blog.marfan.org

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

The Marfan Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、Marfan.orgにアクセスし、当協会の専門家から成る諮問委員会が承認した内容をご参照ください。