海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

彼のハートに寄り添って

2022年1月13日

Monica Newnam

 

このお話は、ほぼ私の夫に関するものです。マルファン患者は夫ですが、その影響は夫だけにとどまりません。

 

マルファン症候群のことを初めて知ったのは2012年のことでした。当時、若くてハンサムなパイロットとお付き合いを始めたばかりでしたが、始めから彼には何か特別なものを感じていました。ですが、幸運にも彼がマルファンなどとは知らずに過ごしていました。私達の間で様々な出来事が起きるようになったのは比較的最近のことなのですが、私との関係を始めるにあたり、彼は病気のことを伝えたくなかったのだと思います。ですが、彼の話を聞くと、彼も苦しんでいたことがわかりました。

 

最初の頃、夫のJoshには恐れていたことがありました。GERD(逆流性食道炎)や不安に起因するものでしたが、他にもストレスチェックで血圧が上昇していることがわかっていました。Walter Reed病院の受診に付き添った際、私達は初めて事態の深刻さに気付かされることになったのです。

 

あの日

 

あの日のことをを忘れることはありません。予定通りCTによる血管造影を終え帰路についていた私達は、ホールを走ってきた医師に呼び止められました。すぐに心エコー検査を受けてほしいとのことでした。その日のうちに、大動脈二尖弁、大動脈基部の拡張、大動脈瘤が見つかりました。それから数日経って、彼から帰宅する機会をもらいました。今後のことを考え、いつまでも付き添わせるわけにはいかないと思ったのでしょう。私は彼の側を離れませんでした。

 

数年後、病気を理由とした空軍からの除隊、FBN1遺伝子における変異の確定、緊急処置室への数度の搬送を経て、彼からのプロポーズを受け入れました。2015年4月25日、私達は結婚の誓いを交わしました。E.E.Cumingsの詩の一節を引用した私は、いつも彼の心臓に寄り添うことを誓ったのです。それからまもなくあんなことになるなんて、夢にも思いませんでした。

 

結婚してから一ヶ月ちょっとで妊娠がわかりました。夫のマルファンのこともあり、不安を感じながらも赤ちゃんの心臓を近くで見守り続けました。子どもはマルファンではなかったものの、ピエール・ロバン連鎖(ピエール・ロバン症候群)という病気を抱えて生まれました。NICUで50日間過ごした後、一家での生活が始まりました。最悪の事態は過ぎ去った ―― そう思っていたのです。

 

不安が現実に

 

二ヶ月ほどで私は仕事に復帰し、夫のJoshは娘のCharlotteと一緒に家にいて、何不自由のなく暮らしている ―― これは現実ではありません。夫から電話があり、胸の痛みで緊急処置室にいるとのことです。(娘の世話は夫の母親に頼んであったようです)私に心配をかけまいと、自力で緊急処置室に向かい、私が帰宅する前に何事もなかったかのように家に戻れると思っていたようです。ところが急転直下、私に来てほしいとのことです。仕事を切り上げて退社した4時間後にはVanderbiltメディカルセンターにいました。この病院に入院することになった夫は、手術の準備を整えていました。

 

その後の数週間から1ヶ月は記憶があいまいです。感情は最高に張り詰め、精神的に最も消耗した時期であったことは間違いありません。生まれたばかりの赤ちゃんは特別な医療ケアを必要とし、唯一の支えとなったのは夫の生命をつなぐ手術だけだったのですから。

 

手術室から出てきた執刀医に手術の成功を告げられた時には、安堵のあまり崩れ落ちそうになりました。本気で死のうと思っていたことは、あながち嘘とは言えません。必死でもがいていたのだと思います。仕事や生活費の支払い、娘や夫の世話 ―― これら全てを離すまいと、死物狂いになっていたのです。

 

心臓に寄り添う

 

こうした経験は愛するパートナーがマルファン症候群ならばよくあることだと思います。日常的な痛みや複数回の通院、病状悪化への恐怖や不安、手術などを私達支える側が経験することはありません。ですが、愛する人のため、サポートは継続しなければなりません。全てを受け止め、愛する人が長生きし、こうした出来事を乗り越えられるような希望を与えるのです。日常的に感じる痛みの話にじっくり耳を傾け、きちんと薬を飲んでいるか、受診の予約ができているかを確認する ―― 夫のハートに寄り添うということは、こういうことなのです。

 

Monica Newnamさんについて:

夫のJosh氏、家族と共にテネシー州ロックデールに住む。

 

出典:

marfan.org

 

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