海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

ベネット氏 70代を楽しむ

 

1950年代、ボルチモアの小学校に通っていたベネットさん。始まりは学校の身体測定でした。当時、学校に医師がいるのは当たり前の時代。校医に身体の異常を認められ、運良くジョンズ・ホプキンス病院のビクター・マキュージック医師へと紹介されることになります。当時無名だったマキュージック医師は、臨床遺伝学の父として、さらにMarfan症候群の研究と治療におけるパイオニアとして、後の世に知られることになるのです。

 

マキュージック医師は、ベネットさんにMarfan症候群を示唆する幾つかの外見的な特徴があることに気が付きました。診断は確定したものの、マキュージック医師は生涯をかけて研究に没頭します。1954年当時、Marfan症候群の合併症の治療や予防について知られていることはほとんどありませんでした。

 

「バスケットボールとか、野球、ウエイトリフティングなんかもやりましたね。やっちゃダメなスポーツだったんでしょうけど」苦笑いを浮かべながら、サウス・フロリダ州の自宅で語ってくれたベネットさんですが、当時、眼の水晶体の問題を除けば、日常生活に支障はありませんでした。

 

しかし、1984年10月、夫婦でヨセミテ国立公園をハイキング中、ベネットさんは自身の異変に気が付きます。奥さんに伝えたものの、息苦しさの原因ははっきりとはしません。以前同じ山を登った時には体の不調はありませんでした。奥さんにも「お前はどうだ」と確認をしましたが、返事はノー。ハイキングは続けたものの、息切れは治まりませんでした。

 

帰宅してやっと事態の深刻さに気が付いたベネットさんは、主治医の元で画像検査を受けました。その結果、大動脈は7.5cmまで拡大していました。

 

検査結果を聞いたベネットさんが、真っ先に電話した相手、それは子供の頃お世話になったマキュージック医師でした。マキュージック医師はベネットさんのことをはっきりと覚えており、次の飛行便でボルチモアまで来るよう伝えました。翌日、病院でベネットさんを出迎えたのは、マキュージック医師とリード・ピエリッツ医師でした。ジョンズ・ホプキンス病院での画像検査で、驚愕の事実が判明しました。ベネットさんの大動脈は7.5cmではなく、10.5cmまで拡大していたのです。

 

しかし、またもや奇跡がベネットさんに訪れます。今回は心臓外科のエキスパートで、Marfan症候群患者の大動脈手術におけるパイオニアでもある、ヴィンセント・ゴット医師の手技に救われることとなりました。

 

手術は大成功に終わり、帰宅したベネットさんは、数ヶ月を経て最適な健康状態を取り戻しました。

 

現在、70代のベネットさんは、自身の限界を理解しています。ですが、だからといってやたらと自制しているわけではありません。あれから37年経ちましたが、ベネットさんは、1週間に5日の運動と健康的な食事を続けながら、定期的に通院しています。座右の銘は「楽観的に生きる」。この生き方は、Marfan症候群を受け継ぎながらも充実した人生を歩む息子さんとお孫さんにも継承されています。

 

Marfan症候群が理解され始めたばかりの時代に、パイオニアである2人の医師に出会うことで、最高の治療につながったベネットさん。ご家族は、該当する医療領域での第一人者を探し出すことの重要性を認識しており、それが息子さんやお孫さんの積極的な治療につながっています。

 

今日、ご家族は、Marfan症候群患者さん向けに公開されている情報に助けられています。ベネットさん一家の場合、充実した幸福な人生をもたらしたのは、2度の偶然で、3人のMarfan症候群の専門家に出会えたことだったのです。

 

出典:

Connect Issues Spring 2021 user-35215390377.cld.bz

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

The Marfan Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、Marfan.org にアクセスし、当協会の専門家から成る諮問委員会が承認した内容をご参照ください。