海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

ロイス・ディーツ症候群とアレルギー

 

はじめに

 

Loeys-Dietz症候群(LDS)の多くの患者さんから、食物アレルギー、副鼻腔疾患、喘息、季節性アレルギー、環境アレルギー、皮膚炎、耳感染症、呼吸器感染症の報告が寄せられています。LDS患者さんそれぞれに違いがあることから、ご自分に適した治療法について医師と相談することが大切です。

 

LDS患者に多いアレルギー症状

 

・食物アレルギー

 

LDS患者さんは、一般集団よりも食物アレルギーを発症しやすくなります。最も多く挙げられる原因食品は、卵、牛乳、大豆、ピーナッツ、小麦ですが、その他にも様々な食物がアレルギーの原因として報告されています。アレルギー症状は、軽度から重度のものまで幅があります。一部の患者さんでは、急性で命に関わるアレルギー反応がみられ、こうした反応は、通常、原因食品を口にした直後にみられます。症状としては、じんましん、むくみ、呼吸困難、咳、嘔吐、低血圧などです。他には、腹痛、排便の異常、不十分な体重増加、胃酸逆流、嘔吐、食道のけいれん、嚥下困難、食欲減退といった、慢性的にみられやすい消化器症状を示す患者さんもおられます。こうした慢性的な所見がある場合、LDSとの関連が判明している好酸球性食道炎が疑われます。(詳細は『ロイス・ディーツ症候群と消化器疾患』をご参照ください)

 

・皮膚炎

 

LDSは皮膚炎との関連も知られています。皮膚炎とは、剥がれ落ち、かゆみを伴う発疹を生じる、慢性の炎症性皮膚疾患です。一部のお子さんでは、特定の食物が皮膚炎の原因となる可能性もありますが、湿度変化、ウイルス感染、気温変化といった多くの他の要因も皮膚炎が広がる原因とされています。

 

・副鼻腔疾患

 

副鼻腔とは頭部にある空洞のことです。副鼻腔の内膜は、ホコリや花粉などの異物や空気中の細菌から体を守る働きがあります。呼吸は副鼻腔の状態に左右されます。副鼻腔疾患とは、副鼻腔で生じる炎症のことを指します。通常、副鼻腔炎の主な所見は、鼻詰まりや鼻からの膿の排出ですが、頭痛を訴える方もいます。LDSの患者さんでは顔面の骨格が異なることから、他の人よりも細菌や異物を副鼻腔から排出しにくいのかもしれません。

 

・環境アレルギー

 

LDS患者さんでは、環境アレルギー(木や草の花粉、ホコリなど)を発症する方が増えています。我々の体内にある防御システムが日常的に接するものを異物と捉えて反応することで、アレルギーは発症します。こうした反応により、アレルギー性鼻炎、目のかゆみ、くしゃみ、鼻詰まりといった症状が現れます。アレルギーにより鼻水が喉や気管に落ちることで、咳や刺激の原因となります。

 

・喘息

 

喘息(気道の拡張・収縮により生じる慢性疾患)は、慢性的な副鼻腔炎あるいはアレルギーにより悪化することがあります。喘息は多くの様々な環境にさらされたり、病気などによって発症します。喘息の症状は、喘鳴、息切れ、胸の締め付け、咳などです。副鼻腔の感染が肺に移動することで、炎症や喘息が引き起こされることもあります。そのため、一部の患者さんでは、副鼻腔炎を積極的に治療することで、喘息が改善することがあります。

 

・中耳炎

 

LDS患者さんでは、外耳道の構造が一般人と異なることがあるため、鼓膜の内側に滲出液が過剰に溜まり、副鼻腔と同様、細菌感染を引き起こすことがあります。中耳炎の症状は、耳の痛み、発熱などです。

 

アレルギーの治療法・管理法

 

・食物アレルギー

 

食物アレルギーの疑いがある患者さんは、アレルギー科を受診してください。アレルギー科では、皮膚テストや血液の検査を行い、アレルギーを特定します。通常、最初の治療として、アレルギーの原因と考えられる食品を控えていただきます。避けるべき食品については、アレルギー専門医が、検査結果やアレルギーの既往に基づき助言します。そうした食品の摂取を徐々に再開できる場合もあります。また、稀なケースではありますが、食物アレルギーや消化器疾患のために、成長に必要なカロリーを摂取できないLDS小児では、栄養チューブ(経鼻チューブ、胃ろうチューブ)あるいは特別なフォーミュラ(幼児用ミルク)による栄養摂取が必要となることもあります。

 

食物アレルギーをお持ちのお子さんの多くに、原因食物により命に関わるアレルギー反応が出た時のために、エピペンが処方されます。エピペンはエピネフリンを放出することで、血管を収縮させて血圧を上げます。また、肺の平滑筋を弛緩させて喘鳴を抑え、呼吸を改善します。さらに、心臓を刺激し、心拍を上げる作用があります。しかし、LDS患者さんの場合、血管に問題があることから、急激な収縮にはリスクが伴います。そのため、アレルギー反応に対するエピペンの使用に関しては、循環器内科医あるいはアレルギー専門医と相談することが大切です。

 

食物アレルギーのあるお子さんが安全でいられるよう、世話をしてくれる人々や学校、クラスメートの家族と連携する必要がありますが、アレルギーがあるからといって食べ物に関わる行事に参加させないというのは間違いです。大切なのはクラスメートの活動から孤立しないようにすることです。おやつやケーキなどのレシピが載っているウェブサイトは多くありますし、学校や社会活動などを送りやすくする情報も多く用意されています。The Food Allergy and Anaphylaxis Network (www.foodallergy.org) には、食物アレルギーにお悩みのご家族に役立つ情報がまとめられています。

 

・皮膚炎

 

皮膚炎のお子さんに関しては、積極的に皮膚の保湿を行うことが大切です。その上で、塗り薬や軟膏について、アレルギー専門医あるいは皮膚科医と相談してください。

 

・副鼻腔疾患および季節性・環境アレルギー

 

鼻詰まりの治療薬には様々な種類があります。鼻炎薬(鼻詰まりの薬)は血圧を上昇させる作用がありますので、LDS患者さんの場合には抗ヒスタミン剤の選択が好ましいといえます。副鼻腔炎については、抗生物質による積極的な治療が必要です。症状のある患者さんは、免役専門医あるいはアレルギー専門医を受診してください。

 

・喘息

 

気管支拡張薬(気道の筋肉を弛緩させたり、拡張させることで、肺に送られる空気量を増やす薬)は、喘息をお持ちのLDS患者さんの長期管理では避けるべきですが、重症化した場合には必要なこともあります。気管支拡張薬の副作用に血圧の上昇がありますので、血管に問題のあるLDS患者さんでは避ける必要があります。吸入コルチコステロイドなどの他の薬剤も、喘息発作の頻度を抑える作用があります。LDS患者さんでは、β遮断薬(一般的に用いられる高血圧の薬)を処方されることもありますが、この薬により持病の喘息が悪化することもあります。β遮断薬については、担当医とご相談ください。

 

・中耳炎

 

耳の感染症抗生物質による積極治療が必要です。再発を繰り返したり、改善しない場合には、鼓膜チューブの挿入が必要となることもあります。この治療は感染が原因で難聴のある方にも行います。鼓膜チューブは外耳道を通して鼓膜まで挿入し、滲出液が溜まるのを防ぎます。鼓膜チューブの挿入は、耳鼻科医が外来手術にて行います。約1年間留置した後、抜去したり、自然に抜け落ちます。合併症としては、耳だれ、真珠腫性中耳炎(皮膚の塊が鼓膜の裏側で大きくなる病気)、鼓膜穿孔などです。

 

*LDSで副鼻腔炎や耳炎の発症リスクが上昇する理由は、免疫不全によるものではなく、頭蓋顔面の構造の違いに起因することにご注意ください。

 

出典:

https://static1.squarespace.com/static/5be355670dbda39d591a525e/t/6222b1c31c636258a8c1f654/1646440902459/LDSF_AllergyRevised_Design+Update+3.4.22.pdf

 

The Loeys-Dietz Syndrome Foundation, a division of The Marfan Foundation, did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, loeysdietz.org.

The Marfan Foundation の一部局である The Loeys-Dietz Syndrome Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、 loeysdietz.org にアクセスしてください。