- はじめに
- 学校提出用文書のサンプル
- 緊急連絡情報(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
- ロイス・ディーツ症候群についての一般情報
- 患者情報(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
- 学校での配慮(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
- ロイス・ディーツ症候群についての一般情報(学校向け)
- 学校向け一般ガイドライン
- 運動制限
はじめに
ロイス・ディーツ症候群の生徒をお持ちの親御さんと生徒の皆さんへ
この学校向けガイドラインは、教育機関・社会機関と皆さんとのコミュニケーションを促進することを意図しており、ロイス・ディーツ症候群(LDS)とその管理法についての全体的な理解につながる情報を提供しています。
本ガイドラインの空欄には、重要な情報と緊急連絡先を記入できるようになっています。担当医からの説明や個々の症例に関する詳細な情報も記入できますので、合わせてご活用ください。LDSが知られるようになってから間もないこともあり、本ガイドラインが、LDSについて説明する際の煩わしさを一部でも軽減できることを願っております。お子さんの医療上のニーズおよび社会的なニーズに応じて、本ガイドラインに記入する内容は更新すべきでしょう。
ご家族から多く受ける質問が「情報はどのくらい必要でしょうか?診断について知っておかなければならないのは誰ですか?」というものです。これについては個々の判断になりますが、学校、デイケアの職員、お子さんのケアに相当の時間を費やす方々であれば、診断について知っておくことが推奨されます。全て詳細に理解する必要はありませんが、緊急の場合に備え、基本的事項については知っておく必要があります。そのためには、このガイドラインの一部(急を要する症状およびその対応の部分)をコピーし、子どもの教育機関および教育者に配布することを推奨します。
全ての子どもや若者が豊かな教育環境を十分に享受でき、学業面での成功を収める上で必要となる特別な配慮をたやすく受けられること ―― それが私達の願いです。一部のお子さんは、他のお子さんよりも支援や配慮を多く必要とします。お子さん、教師、校長、養護教諭とのコミュニケーションを良好に保ち、誰もが情報を与えられ、安心できる状態にあることが重要です。
本ガイドラインがお役に立てば幸いです。
The Loeys-Dietz Syndrome Foundation
学校提出用文書のサンプル
日時:
件名:
教育関係者の方へ
【生徒名】はロイス・ディーツ症候群(LDS)と診断されました。以下は【生徒名】および私達家族と学校とのコミュニケーションを円滑に進めることを目的としており、【息子/娘】の緊急時の連絡先情報と、LDSに関する一般的な情報を含みます。
【生徒名】のため、LDSについてご理解いただき御礼申し上げます。貴校の生徒である【生徒名】の体調には、ご配慮いただくようお願い致します。【生徒名】の学校生活では、活動制限や特別支援が必要となる可能性もございますが、学校制度に十分適応できるよう、励ましと支援のほどよろしくお願い致します。
学業においてよい成績を収めるため、特別な配慮を必要とする生徒もおります。我が子には正直であることを奨励し、自身のニーズや必要な支援についてはっきりと申し伝えるよう言い聞かせております。私たちの願いは、有意義で充実した学校生活を送ることができるよう、【生徒名】に最高の学習環境を提供していただくことです。
【生徒名】やLDSに関する質問がございます場合には、遠慮なく私共にご連絡ください。今年度もよろしくお願いいたします。
敬具
【生徒の両親】
連絡先
緊急連絡情報(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
名前:
誕生日:
緊急連絡先:
緊急連絡先との関係:
電話番号:
電話番号(予備):
アレルギーの有無:
ロイス・ディーツ症候群についての一般情報
LDSは、大動脈基部(心臓から全身へと血液を送る大動脈の根本の部位)および全身の動脈における瘤、動脈蛇行(動脈のねじれ)、両眼隔離(両眼の間隔が広い)、口蓋垂(のどちんこ)の異常所見を特徴とする疾患です。その他の頭蓋顔面的特徴や骨、皮膚、心臓の所見が組み合わされて現れることも知られています。
LDSと診断された人は、一般集団やその他の結合組織疾患の患者さんでは危険とは考えられないサイズでの大動脈の裂傷や破裂が起こりやすい傾向にあります。
大動脈が裂けたり、破裂したりするリスクが高まる遥か前に、外科的介入による大動脈の修復がおこなわれます。大部分のケースにおいて、生徒が重篤なイベントに見舞われるリスクは低いと考えられますので、生徒の能力が及ぶ範囲内で、学校の活動には参加するように促してください。
消化器およびアレルギーに関連する所見には、アレルギー反応を伴う食物アレルギー、血便、宿便、腹痛などがあり、稀なケースでは、腸破裂などの管腔臓器破裂が報告されています。生徒に以下の所見がみられた場合には、直ちに緊急連絡先に通知するとともに、近隣の救急処置室へ連絡することを検討してください。
救急処置室では、生徒がLDSであるということ、および(頭部から骨盤にかけての)動脈が裂けるリスクが高いことを伝え、直ちにCTA/MRAあるいは心エコー検査をおこなうよう依頼してください。稀ではありますが、脾臓や腸などの管腔臓器の破裂や裂傷の有無を調べる検査が必要となることもあります。
アレルギー反応がみられる場合、エピペンでは血圧の急上昇を引き起こす可能性があることから、ベナドリルが第一選択となります。アナフィラキシー反応の場合、アレルギー反応の治療のため、エピペンを使用すべきです。
患者情報(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
氏名:
誕生日:
緊急連絡先:
緊急連絡先との関係:
電話番号:
電話番号(予備):
緊急連絡先2:
緊急連絡先との関係:
電話番号:
電話番号(予備):
アレルギー:
服薬:
主治医:
電話番号:
電話番号(予備):
勤め先:
医師:
専門:
電話番号:
電話番号(予備):
勤め先:
医師:
専門:
電話番号:
電話番号(予備):
勤め先:
現在の病状:
学校での配慮(ロイス・ディーツ症候群生徒向け)
氏名:
誕生日:
-体育・スポーツ
- 体育の授業内容を変える、あるいは体育の代わりとなる健康関連の単位を設ける
- 接触スポーツを制限する
- 転倒するような運動あるいは首や背中に負荷がかかるような活動を制限する
- 心血管系に負荷がかかる運動は適度におこなう
- 等尺性運動を避ける
- 重いものを持ち上げない
-授業・教室
- 日中の疲労回復のための休憩時間を設ける
- ストレッチやウォーキングの時間を設ける
- 家庭用と学校用の教科書を2セット用意する
- 好きな席を選ばせる
- 床の上でおこなう集団活動ではイスやクッションの使用を許可する
- エレベーターの利用を許可する
- トイレ休憩を認める許可書を発行する
- キャスター付き教科書用バッグの使用を認める
- ノートを写すサポート役やノートパソコンの使用を認める
- 板書を写すためのサポート役を配置する。あるいは板書を写すためにノートパソコンの使用を認める。
- 学習ガイドや授業ノートのコピーを配る
- 授業間の移動に多くの時間を与える(終了ベルが鳴る前の退出を認める)
- テスト時間や宿題の期限を延長する
- 文字の見た目の評価は止め、書いた内容や努力を評価する
- ロッカーは目の高さとし、組み合わせ式ではなく、デジタル式の鍵にする
- 配布するプリントは、書き直しの必要がないよう、穴埋め式としたり、アンダーラインを施すようにする
- 過度の脱水状態を防ぐため、水筒の持参を認める
-サポートツール
- 上半身を支えるアームレスト付きイス
- 高さ調節可能なイスおよびテーブル
- イスの座面用・背面用のパッド
- 人間工学に基づくペンおよび鉛筆のグリップ
- PC使用時の手首用キーボード・マウスパッド
- エルゴノミクスキーボードまたはAlphaSmart(NEO2製)を利用する
-その他
- 特定のアレルギー反応に対する配慮
- 間食を認めるなど特別な食事への配慮
- 宿題やテストの期限に柔軟性をもたせる(定期的な症状の出現および欠席への配慮)
- 治療による影響に応じた、学業における負荷の軽減(元の状態に戻るまで継続する)
- 必要に応じた、理学療法や作業療法、言語療法
- 自由記入欄:
保護者署名欄
ロイス・ディーツ症候群についての一般情報(学校向け)
-ロイス・ディーツ症候群とは?
ロイス・ディーツ症候群(LDS)は遺伝性の結合組織疾患であり、2005年に特定・命名されました。当時、LDSには他の結合組織疾患と一部重なる特徴がみられたものの、まったく別の疾患として認識されていました。LDSと共通する特徴をもつ疾患として、マルファン症候群、vEDS(血管型エーラス・ダンロス症候群)、シュプリンツェン・ゴールドバーグ症候群があります。
LDSは、大動脈基部(心臓に最も近い、大動脈の一部)および全身の動脈の動脈瘤、動脈のねじれ、両眼隔離(両目の間隔が広い)、のどちんこ(口の後部にぶら下がっている肉片)の異常を特徴とします。
頭蓋顔面(頭部および顔面)、骨格、皮膚、心臓に関する幅広い所見が報告されているものの、現れ方は幾通りもあることから、同一の医学的特性をもつLDSの患者さんはいません。
全てのLDS患者さんにおいて、一般集団や他の結合組織疾患では危険とは考えられない動脈径で解離や破裂をきたす重大リスクが存在します。
一部の患者さんは、内反足や扁平足、側弯症、頚椎不安定症などの整形外科的所見によって経過観察となり、手術やコルセット、行動制限などによる治療が必要となることがあります。
さらに、食物アレルギーなどの消化器系の症状を訴えるLDS患者さんもおり、食事に影響します。一部のお子さんでは、栄養補給のための消化器チューブが必要となります。
学習に関わる問題はLDSでは一般的にみられるわけではありません。ですが、一部の生徒では、関節のゆるさにより、バランスが取りづらくなったり、細かな動きが必要となる運動や粗大運動が困難となることがあります。LDSの生徒では、関節のゆるさや消化器系の問題から、他の生徒よりも早く疲労を感じる可能性があります。
-ロイス・ディーツ症候群の診断
LDSは遺伝性疾患であり、医学的特徴や遺伝子検査によって診断されます。
-ロイス・ディーツ症候群の管理
LDSの生徒は、循環器科、耳鼻科、整形外科、アレルギー科、消化器科などを受診しています。
血圧を下げるための降圧剤を飲んだり、その他の症状の治療のために薬を服用している可能性があります。
薬の服用は、学校でも必要となることがあります。
-学業におけるロイス・ディーツ症候群の影響
複雑な病態であることから、体調不良や通院などで欠席することがあります。学業において成果を上げるため、様々な場面で、療養中でも教育を受けられるような仕組みが必要となることがあります。
-生徒の病態に変化が生じた場合の対応
生徒によっては、食事制限や運動制限が必要となる場合があります。
生徒の情緒面や能力の変化に懸念がある場合は、生徒の家族とのコミュニケーションが重要です。
学校向け一般ガイドライン
学校側にとって生徒が成果を収める上で最も重要なことは、これまでに述べてきたLDSの特性について情報提供を受け理解したうえで、求められるサポートを提供し、生徒が置かれている教育環境および社会環境において生産的かつ快適でいられる状態を実現することです。
-緊急時の対応
LDS生徒が特定の症状(「緊急連絡情報」参照)を示している場合には、直ちに親御さんに連絡し、近隣の緊急処置室への連絡を検討してください。こうした状況を学校関係者全員が認識しておき、救急隊員に情報提供できるようにしておいてください。
-運動制限
運動制限の主な目的は、心臓や動脈にかかる負荷を減らすことです。心拍数や血圧が持続的に上昇したり、一連の筋肉が疲弊したりする運動プログラムは避ける必要があります。運動制限に関しては、LDSの生徒に関わる学校関係者全員に周知するようにしてください。(具体的な内容については「運動制限」参照)体育の授業に参加できないLDSの生徒については、学究的成長を促したり、創造力を育むことのできるような他の選択肢を提示すべきです。なお、病気のために授業に参加できない場合、卒業要件には関わりません。
-薬の服用
学校でも薬の服用が必要となることがあります。また、時間とともに薬が変わっていくこともあります。親御さんは、薬に変更があった時には学校関係者に連絡することが必要です。また、学校関係者は、提供されている情報が最新となっているよう努める必要があります。
-矯正装具
学校で矯正装具を利用する場合、車いすや他の生徒のサポートが必要となることがあります。サポート教員や他の生徒などに支援してもらうようにしてください。
-アレルギー
LDSの診断を受けたお子さんでは、アレルギーはよく知られている問題です。親御さんはお子さんのアレルギーやアレルギーに関する制限、生徒がアレルギー原因物質に曝露した場合の反応について、学校側にはっきりと伝える必要があります。
-整形外科的問題
重いバッグを背負うことで側弯症に悪影響が出る可能性があるため、持ち運ぶ荷物の重量を制限することが大切です。学校用と家庭用の教科書をそれぞれ1セットずつ用意したり、キャスター付きバッグに代えることで、この問題は解決できます。
関節がゆるいことで痛みや疲労を感じる生徒では、テスト時間の延長や宿題の量を減らす、口頭でのテストとする、または、ノートを取るためにPCの使用を認めるといった処置が必要となるかもしれません。(タイピングによるノートテイキングは、痛みを感じることなく、より効率的にノートを取ることができます)
-通院・入院
通院や入院のため、欠席が多くなるかもしれませんが、健康維持のためには欠かすことはできません。通院などのために、長距離移動を伴うこともあります。
長期的な欠席となっても学業に支障がでないよう、こうした期間に完了できるような課題を出してもらうよう学校に要望してください。
-諸活動への参加
年齢を重ねるに連れ、LDSの子どもは身体的あるいは医学的な「他者との違い」に気が付くようになります。診断を受け、管理されることによるストレスは、小さな子どもに精神的・身体的な重荷を背負わせることになります。LDSの子どもは、状態が許す限り、様々な活動に参加することが推奨されます。
置かれている教育環境の中でLDSの生徒が安心して過ごせるよう、あらゆる努力が払われるべきです。LDSの生徒の行動や他の生徒との関わり方に変化が生じた際には、親御さんに連絡するようにしてください。こうすることで、関係者が連携して行動できるようになり、生徒が自分自身の病状を理解し、健全な環境において自らの可能性を最大限に発揮できるようになります。
学習過程においては、生徒の病状により、状況が頻繁に変わることがあります。家族、生徒、学校が常に連携して、最高の教育環境を提供できるようにしなければなりません。
運動制限
-一般情報
運動制限の主な目的は、LDSの生徒の心臓や動脈にかかる負荷を低下させることです。
LDSの生徒では心血管系を活発な状態に保つことが推奨されます。運動することで、血圧や心拍が自然に低下しますし、生涯にわたって、心血管系の健康維持と楽しさをもたらしてくれます。
体育の要件や強度に関しては、生徒、家族、教師の間で率直な意見交換をおこない、生徒が安全に体育に参加できるようにしてください。
運動中に普段の会話を続けられるようであれば、運動強度は安全範囲内であることの目安になります。
-避けるべき運動
LDS患者が避けるべき運動に関する一般的なルールは次のとおりです。
- 140を超える血圧が持続する運動
- 一連の筋肉を酷使することで極度に消耗する運動
以下が避けるべき運動に該当しますが、これが全てではありません。
- 極度に疲労する、競争を伴う運動
- 全力ダッシュ
- 身体への急な打撃が加わるリスクが高い、身体を酷使する接触を伴うスポーツ
- 等尺性運動(ウェイトリフティング・懸垂・ロープクライミング・腹筋など、一連の筋肉が疲労する運動。体力テストも含む)
- バク転・体操(頚椎不安定症によるリスク回避のため)
-推奨される運動
体育の授業において、健康的なライフスタイルの一部として、楽しみのために適度な強度でおこなわれる日常的な運動は、時間と共に無理なく心拍や血圧を下げる効果があることから、推奨されます。
LDS患者さんは、大部分の状況において、筋肉の疲労を伴わない運動や持続的に血圧や心拍が上昇しない運動であれば、可能な範囲でどのような活動にでも参加することができます。
体育に関して質問や不安がある場合には、学校から体育のカリキュラムを入手し、担当の循環器内科医に見せ、参加可否について判断を仰いでください。
以下のような運動が推奨されますが、この限りではありません。
- 定期的におこなう適度な有酸素運動(例:水泳・自転車・ハイキング・ジョギング・テニス)
-体育への参加
体育への参加が不適とされるケースであっても、生徒の可能性を最大化するために、他の選択肢を探究させるようにしてください。単純に見学させるだけでは、教育的・社会的発育上の害となることもあり、選択肢とはなり得ません。
出典:
The Loeys-Dietz Syndrome Foundation, a division of The Marfan Foundation, did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, loeysdietz.org.
The Marfan Foundation の一部局である The Loeys-Dietz Syndrome Foundation は、当翻訳には関与しておらず、翻訳内容に関してはいかなる承認も行っておりません。このトピックに興味をお持ちの方は、 loeysdietz.org にアクセスしてください。