海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

夫婦の絆 病気を乗り越え支援へつなげる

2021年8月18日

Mehmet Tascioglu

 

2010年の清々しいある日のこと。パム・モウルトラップさんは病院の受付で書類の記入を済ませると、献身的な最愛の夫であるゲイリー氏とともに診察室へと向かいました。膝の手術を控えていた彼女は、術前に主治医の診察を受ける必要があったのです。

 

しかし、診察でいくつか気がかりな点を見つけた主治医は、心エコー検査をオーダーしました。心臓やその周囲の血管を調べるためでした。主治医のこの的確な判断が彼女の命を救うことになります ―― 検査で大動脈の瘤が見つかったのです。そのわずか5日後、パムさんは病院にいました。膝の簡単な手術を受けるためではありません。命に関わる大動脈解離を防ぐ開胸手術を受けるためでした。

 

パムさんの手術は成功しました。その陰には医療チームや主治医、外科医の功績があります。しかし、最も大きな立役者となったのは、疑いようのない愛情を示しながら、我を忘れてオペ室の外で待ち続け、手術成功のために力を送っていた、夫のゲイリー氏でした。ゲイリー氏はインターネットを使って、パムさんの病気について調べました。数週間に渡って様々なウェブサイトを調べた結果、パムさんの病気の原因はマルファン症候群の可能性が高いという結論に至りました。4年後の2014年にゲイリー氏はパムさんを誘い、病気の原因を知るため、ボルチモアで開かれていたThe Marfan Foundationの年次総会に足を運ぶことになります。

 

パムさんは総会で開催されていた病気の相談会に参加することができました。この相談会は、総会参加者らが世界的な専門家と診断や治療について意見を交わすことができるようにと主催者側が用意したものでした。パムさんにとって幸運だったのは、遺伝子研究の世界的権威であるハル・ディーツ医師に話を聞いてもらえたことです。ディーツ氏はThe Marfan Foundationの専門家委員会のメンバーを長く務めていました。ゲイリー氏はディーツ氏にパムさんの病気はマルファン症候群ではないかとの持論を説明しました。その予想はあながち的外れではありませんでした。ロイス・ディーツ症候群(LDS)の可能性が最も高い ―― これがディーツ氏からの回答でした。LDSはディーツ氏と、同僚のバート・ロイス医師が10年近く前に発見した疾患です。

 

パムさんのかかりつけ病院のボーモント病院では、比較的新しい病気であるLDSについて知っている人は誰もいませんでした。このことに疑問を感じたゲイリー夫妻は、同様の疾患がありながら、適切な診断や治療を受けられない人々にとって危険な状況であることに気が付きました。デトロイト・マルファン・コミュニテイとのつながりのあった夫妻は、地元で啓発活動を行い、コミュニテイと深く関わる決意を固めました。

 

夫妻はボルチモアの集会に参加するため、クラウドファンディングキャンペーンを立ち上げ、そのキャンペーンで集まったお金の残りを地元のマルファンコミュニティに寄付することにしました。

 

2005年に発足したデトロイト・マルファン・コミュニティは、気さくで熱意にあふれ、自身もマルファン患者であるLi Li博士(ウェイン州立大学 分子医学・遺伝学・内科学教授)が中心メンバーとなっています。このコミュニティはマルファン症候群、ロイス・ディーツ症候群などの結合組織疾患患者にとって安全な交流の場となっていました。

 

ゲイリー氏自身が診断されたわけではありませんが、ミシガン大学クリーブランド・クリニックの医療専門家などの招待講演者の調整役を引き受け、コミュニティに貢献しました。

 

新型コロナウイルス感染症の流行が収束した折には、ゲイリー氏、パムさん、LiLi博士をはじめとする精力的なコミュニティメンバーは、対面による集会の開催、より多くの医療講演者の招待、ボーモント病院での啓発コーナーの設置といった、数多くの目標を思い描いています。

 

夫婦になって48年、ゲイリー氏とパムさんは起伏の激しい人生を歩んできました。パムさんがLDSと診断されてからも、夫妻のエネルギッシュな精神は、マイナスよりもプラスの効果を生み出してきました。お二人から結合組織疾患と診断された方々にメッセージがあります。

 

パムさんからのメッセージです。「お友達や家族、上司に病気のことを伝え、混乱や誤解を生まないようにしてください」

 

パムさんの不可解な病気について最初はインターネットをあてにしたゲイリー氏でしたが、その限界について語っています。

 

「インターネットは統計を使って皆さんを怖がらせ、トラウマを植え付けます。しかし、生活し、問題を解決しながら、成長していく方法はあるのです。」ゲイリー氏は、精力的にコミュニティに携わりながら、新たに結合組織疾患と診断された方々からのメールに返信しています。彼らの人生を支援し、The Marfan Foundationが公開している事実に基づく情報を提供しているのです。

 

結合組織疾患に恐怖したこともあったでしょう。しかし、変わることのないお互いへの献身と支援体制がこの夫婦に不屈の力を与えていたのです。夫婦は順風満帆なキャリアを歩むことができただけではなく、素晴らしい家族にも恵まれていたのです。

 

ゲイリー氏とパムさんの物語は、お互いに対する、そして支援してくれるコミュニティへの粘り強さと献身の重要性を伝えてくれます。お二人にとって、それ以外の選択肢はありえなかったのですから。

 

Mehmet Tasciogluさんについて:

医療分野に関心があり、バイオメディカル研究への情熱を燃やす高校3年生。ミネソタ州・ノースビルのノースビル高校に在学し、様々なクラブや組織の主導的な役割を果たす。マルファン症候群および類縁疾患患者の人生にポジティブな影響を与えたいと思っており、The Marfan Foundationのサポート活動やブログ投稿を楽しむ。将来の夢は心臓外科医。

 

出典:

blog.marfan.org

 

The Marfan Foundation did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, Marfan.org, for materials approved by our Professional Advisory Board.

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