海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

ロイス・ディーツ症候群と消化器疾患

 

はじめに

 

ロイス・ディーツ症候群(LDS)の患者さんでは消化器疾患を抱えている方が多く、しばしば食物アレルギーを伴います。患者さんそれぞれで症状が異なるために、自分に適した治療について主治医と相談する必要があります。

 

ロイス・ディーツ症候群で多くみられる消化器疾患

 

・食物アレルギー

 

何らかの食品アレルギーをお持ちの方もおられると思います。あらゆる食品がアレルギーの原因となりますが、原因として挙げられる一般的な食品は、牛乳、卵、ピーナッツ、木の実、魚介類、大豆、小麦です。LDS患者さんは、一般集団よりも食品アレルギーを発症する可能性が高くなります。アレルギー症状としては、発疹、呼吸困難、腹痛、排便異常、体重増加不全、逆流性食道炎、嘔吐、食道攣縮、食欲不振など、軽度のものから重度のものまで幅があります。アレルギー反応には、慢性的で軽度の反応から急性で命に関わる反応まであります。食物アレルギーの患者さんには、万一の場合に備え、頻繁にエピペンが処方されますが、LDS患者さんの場合、エピペンの使用法が一般集団とは異なることから、担当医とご相談ください。

 

好酸球性消化器疾患(好酸球性食道炎/胃腸炎/大腸炎

 

一部の患者さんでは、食物アレルギーにより、腸の内壁にアレルギー性の炎症が生じることがあります。腸の炎症が起こると、白血球が内壁に過剰に集まります。これらの白血球は好酸球と呼ばれており、アレルギーが生じると活発になります。食物アレルギーの症状がない状態でも好酸球性消化器疾患は発症します。LDS患者さんでは、一般集団よりもこうした消化器疾患を発症しやすくなります。診断には消化管の生検が必要です。好酸球性食道炎の所見には、重篤な胸やけ、嚥下困難、食片圧入、吐気、嘔吐、下痢、体重減少などがあります。

 

・炎症性腸疾患(IBD

 

LDS患者さんのごく一部には、炎症性腸疾患(IBD)と診断される方もおられます。IBDは慢性的な腸の炎症であり、炎症の場所によって、クーロン病や潰瘍性大腸炎などと呼ばれます。クーロン病では、消化管全体に炎症を生じる可能性がありますが、潰瘍性大腸炎は結腸だけに限定されます。いずれの疾患でも、腸壁の炎症は出血や栄養不良の原因となります。一般的な症状は、吐気、下痢、腹痛、血便です。これらの症状は、疲労や食欲不振を招くことが多く、血液が失われることで、関節炎や眼の病気、貧血などを伴うことがあります。IBDによる栄養不良の結果、発育遅延や思春期の遅れが生じることがあります。

 

・便秘

 

LDSを含む結合組織疾患の患者さんでは、便秘となる方が多くおられます。便秘になると、便が太くて硬いことによる排便困難、小石のような便、硬い便と液状便を交互に繰り返すといった症状がみられます。重度の便秘は、頻繁な便失禁や便漏れにつながる可能性もあります。

 

消化器疾患の診断法

 

LDSでみられる消化器疾患は、いくつかの検査を組み合わせて診断されます。

 

・臨床検査

 

血液検査ではアレルギーの有無がわかったり、便潜血検査では、炎症や貧血が見つかります。

 

内視鏡検査

 

IBDを診断したり、炎症の範囲を調べるために数種類の内視鏡を用います。内視鏡検査では、先端内部にライト付きカメラが取り付けられた柔軟性のある細い管を使って、消化管の壁を調べます。画像は拡大され、スクリーンに映し出されます。内視鏡を使った生検により組織を採取し、詳しい検査を行うことも可能です。消化管の部位によって、以下のように内視鏡検査の呼び方が変わります:S状結腸鏡検査(大腸の下部3分の1)、結腸内視鏡検査(大腸)、食道胃十二指腸内視鏡検査(食道、胃、十二指腸の内壁)、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(肝臓および膵臓内の胆管・膵管)LDS患者さんでは、一般集団と比較して内視鏡検査で注意を要するため、担当医とご相談ください。

 

・レントゲン・CT・MRI

 

腸の炎症には様々なタイプがあることから、容易に診断が付くとは限らず、正確な診断まで数年を要することもあります。診断が確定しない場合でも、症状の増悪リスクを低下させたり、消化器系の正常機能を維持するため、これらの検査を用いた治療は可能です。

 

消化器疾患の管理・治療

 

年齢を重ねるに連れ、食物アレルギーが治る方もいらっしゃいますが、食物アレルギーに起因する消化器疾患(炎症性腸疾患、好酸球性食道炎)は慢性化する傾向にあります。数年間は症状が治まることもありますが、再燃リスクを低減するため、一般に維持投薬が必要となります。担当医と協力しながら、食生活の変更や投薬治療などの管理方法を考える必要があります。稀なケースでは、栄養チューブや手術が検討されることもあります。

 

臨床検査の結果、食物アレルギーが疑われる場合、通常最初に行う治療は、検査結果が陽性となった食品を避けることです。そうした食品は徐々に再開できます。アレルギーの原因食品を避けても症状が改善しない場合には、炎症プロセスを抑えるためにステロイドを短期間服用し、長期的な管理に向け、薬を調整します。稀なケースで、消化器疾患により十分なカロリー摂取ができないLDS小児に対しては、栄養チューブが使われることもあります。

 

食物アレルギーをお持ちのお子さんの多くは、原因食品を口にした時に備え、エピネフリン注射剤(エピペン)を処方されます。エピペンは血管を収縮させることで血圧を上げ、肺の平滑筋を弛緩させることで、喘鳴や呼吸を改善します。また、心臓を刺激して心拍数を増加させ、顔や唇の周りにできる蕁麻疹や腫れを抑えます。LDSの患者さんでは血管に問題が生じていることから、血管の急激な収縮は危険である可能性があるため、アレルギー反応が起こった時のエピペン使用については、循環器内科あるいはアレルギー専門医に相談してください。アレルギー反応が命に関わらない場合には、ベナドリルが第一選択となることがあります。

 

出典:

https://static1.squarespace.com/static/5be355670dbda39d591a525e/t/6222b246aeef153847b8ba3c/1646441032711/LDSF_Gastrointestinal+Issues_Edited+06202019+3.4.22.pdf

 

The Loeys-Dietz Syndrome Foundation, a division of The Marfan Foundation, did not participate in the translation of these materials and does not in any way endorse them. If you are interested in this topic, please refer to our website, loeysdietz.org.

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