Hearing and Ear Findings for Marfan Foundation Annual Conference
この研究は、希少な結合組織疾患である**ロイズ・ディーツ症候群(LDS)**の患者における聴覚および耳の所見について調査したものです。
以下に主要な点をまとめます。
• ロイス・ディーツ症候群(LDS)について:
◦ マルファン症候群に似た希少な結合組織疾患ですが、独自の明確な臨床所見を持ちます。
◦ 具体的には、広範囲の動脈瘤や蛇行、眼間開離(眼が広く離れていること)、口蓋裂(両側口蓋垂など)といった特徴があります。
◦ LDSの病態は、TGF-β(形質転換増殖因子ベータ)経路の機能喪失が関与しており、TGF-βシグナル伝達の逆説的な上方制御を引き起こします。
◦ LDSには6つの遺伝的サブグループ(TGFβR1、TGFβR2、SMAD3、TGFB2、TGFB3、SMAD2の遺伝子変異による)があります。
• 研究概要:
◦ 5歳から67歳までの36人のLDS患者(タイプ1から4)を対象とした観察的な自然史研究が行われました。
◦ この研究の目的は、LDS患者の耳鼻咽喉科的および聴覚学的所見と、それらが臨床管理に与える影響を検討することでした。
• 聴覚所見:
◦ LDS患者の38%に難聴が認められました(62%は正常聴力)。
◦ 難聴の程度は、大半が軽度または中等度でした。ただし、LDSタイプ1の一例で、最高周波数帯に重度の難聴が認められました。
◦ 難聴の種類に関しては、タイプによって特徴が見られました:
▪ 伝音難聴はLDSタイプ1と2に限定されており、それぞれ約30%に発生しました。
▪ 感音難聴はLDSタイプ3と4に限定されており、LDSタイプ4では43%、LDSタイプ3では(特定されないケースを含めると)60%に発生しました。
• 耳鼻咽喉科所見:
◦ 最も一般的な特徴は顔面非対称、次いで眼間開離でした。
◦ **口蓋異常(口蓋裂)**はLDSの特徴的な所見の一つで、81%に高口蓋、39%に両側口蓋垂が見られました。これらの口蓋異常は主にタイプ1と2に発生しました。
◦ 口蓋の変形は耳管機能不全を引き起こし、中耳の異常な圧力や再発性の感染症につながる可能性があります。
◦ 患者の約3分の1、特にタイプ1と2の約50%が、耳感染症のために鼓膜チューブ留置術の既往がありました。
◦ 鼓膜チューブが抜けた後に鼓膜穿孔が自然に閉じない割合が、LDS患者では非常に高いことがわかりました(タイプ1で60%、タイプ2で40%)。これは、口蓋裂を持つ非LDS患者の一般的な発生率(15〜20%)よりも著しく高い値です。研究者らは、TGF-β経路が鼓膜穿孔の正常な治癒過程を妨げている可能性を指摘しています。
◦ 伝音難聴は、タイプ1の全例およびタイプ2の65%で、慢性感染症や鼓膜穿孔が原因となっていました。
◦ **真珠腫(中耳に異常な上皮の蓄積が生じる状態)**も、タイプ1で1例、タイプ2で2例(中耳真珠腫)、タイプ3で耳管内真珠腫が確認されました。
• 結論と推奨事項:
◦ 難聴はLDS患者に比較的よく見られます。
◦ LDS患者は、口蓋異常に伴う耳管機能不全により、感染症や真珠腫を発症しやすい可能性があります。
◦ 鼓膜チューブ留置術の実施については、鼓膜穿孔の治癒が遅れる可能性があるため、慎重な検討が必要です。鼓膜穿孔修復術を行う場合は、軟骨のような材料を使用することが、外科的失敗を防ぐのに役立つ可能性があります。
◦ 研究者らは、全てのLDS患者に対して、包括的な耳鼻咽喉科および聴覚の評価と定期的な経過観察を強く推奨しています。
この研究結果は、『Otology & Neurotology』誌に発表されています。
LDS患者の聴覚と耳の健康に関するこの情報は、まるで、家を建てる際に地盤の特性を事前に把握するようなものです。地盤が軟弱であれば、それに応じた基礎工事が必要になるように、LDS患者の耳には、その疾患特有の構造的・生理的特性を理解した上で、適切な診断と治療、そして継続的なケアが不可欠である、ということが分かります。
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