海外マルファン情報

米国マルファン症候群患者団体The Marfan Foundationからの情報を中心に、マルファン症候群や関連疾患についての海外情報を翻訳して発信します。

地上に降りた天使たち

2018年5月7日

Auburn Ponder Anderson

 

国際看護師週間ということですので、さほど注目を浴びることはなくとも、身を粉にして働く素晴らしい看護師の皆さんに敬意を表したいと思います。その中には、1989年に夫のテッド・ポンダーがマルファン症候群で手術をした際、大きな支えとなり、感銘を与えてくれた方々も含まれています。

 

よく晴れた6月の日曜日の朝のことでした。その日私達夫婦は教会に行く準備をしていました。夫のテッドが朝食をとろうと廊下を歩いていた時、後ろ向きに床に倒れ、仰向けになってしまったのです。駆け寄った私は、夫が激しく突き刺すような背中の痛みで倒れたことがわかりました。子供たちを近所の人にお願いして、夫とフォーダイス病院へと向かいました。夫を診察した医師は、夫がマルファン症候群であることがわかると、私達にすぐに州都リトルロックへ行くよう言いました。夫は単に背中をひねっただけだと思い込んでいましたが、とにかく一緒にリトルロックにあるセイント・ヴィンセント病院へと急ぎました。

 

医師らは、夫の大動脈が解離していることがわかると、手術が受けられるヒューストンの病院へと夫を輸送する準備に入りました。夫と一緒の飛行機に乗ることはできたのですが、私は2人の子供の面倒をみなければなりません。夫が私を残して飛び立ってしまうと思い、とても慌てていました。ですが、夫に付き添ってくれる看護師の対応は配慮が行き届いたものでした。彼女は、ご主人からは片時も目を離しません、と言って私を落ち着かせてくれました。何度も同じような経験をしているという彼女の言葉にも安心し、夫を彼女に任せることにしたのです。

 

両親と私は子供たちを預けると、車でヒューストンに向かうことにしました。運転中、夫の手術がどうだったのかを知るすべはありませんでした。――まだ生きているのだろうか、助からなかったのではないか。私達は心配のあまり我を忘れていました。携帯電話が珍しい時代でしたので、それを使って確認することもできません。長距離電話をかけて私の家に請求してもらおうかと思いましたが、テキサス州では家にいる誰かの同意が必要でした。――こんな時に家に誰もいないなんて。日が昇り、請求先を妹にしてやっとのことでメソディスト病院に電話をつなげることができました。電話に出た看護師は、気が動転した私の声を聞くと、優しく落ち着かせてくれました。彼女は夫が無事であると何度も強調し、脚の血色もよくピンク色であることを教えてくれたのです。夫の脚が危険な状態であることは知りませんでしたが、その看護師がわざわざ時間をかけて説明してくれたことに感謝しました。そして彼女は、私達に安心して落ち着いてヒューストンまで来るよう助言し、自分がしっかりと夫を看護する、と約束してくれたのです。

 

病院についた私達は、ICUで夫と数分間面会しました。そして宿泊場所が必要になった私達に看護師がまたもや救いの手を差し伸べてくれたのです。入院患者の家族がよく利用する近くのホテルを紹介してもらい、大喜びしました。この時点で夫はまだICUにいましたが、看護師の対応は素晴らしいものでした。彼女達は自ら知識と経験を生かして重篤な患者数名の看護をしていました。ある晩のこと、私は夫の状態が心配で居ても立ってもいられませんでした。その様子をある看護師が見ていました。彼女は私に近づくと、夜遅く夫の様子を見に来てもいいと言ってくれました。面会時間は過ぎているはずですが、彼女は私の気持ちを落ち着かせるにはその方がいいということがわかっていたのです。

 

ここの看護師達は親切で安心感を与えてくれるだけではありませんでした。彼女達は他の看護師と同じように、必死で働いていました。進んでやりたくないような仕事も多くありますが、それでも彼女達は患者に恥をかかせないよう、敬意を払いながら上手くやり遂げるのです。彼女達は細心の注意でICUの患者を看た後で、その様子を分厚いノートに図や表を使って慎重にまとめていました。コンピューターがない時代でしたので、生死を分ける現場ではそのような詳細な情報が重要になるのです。

 

ヒューストンの滞在中、印象深い看護師がいました。彼女は患者のために権威に立ち向かってくれました。夫の血圧が上昇して心配していた時、値が高すぎることに気づいた彼女が執刀医に電話をかけてくれました。到着した医師はそのような些細なことで呼び出されたことに非常に腹を立てていました。私達にとっては全く些細なことではありませんでしたので、その心優しい看護師は夫のため自分の立場を危険にさらしてくれたのです。

 

ここに登場した看護師達は、マルファン症候群による切迫した状況での体験をより良いものとするためには欠くことのできない存在でした。その仕事は困難ではありますが、心から自分達を必要としてくれる人々のため、忍耐と思いやりをもって奮闘するのです。最近ある看護師が私に語ってくれたことがあります。彼女は患者さんからもらった感謝の手紙やカードを箱に入れて保管しており、仕事で落ち込んだ時には読み返し、なぜ自分がこの道を選んだのかを思い出すようにしている、と。看護師とは天命であり、職業ではないのです、と語る彼女に私は共感しました。ナースは地上で神様から与えられた務めを果たしているのだと思います。地上に降りた天使なのです。そうでなければ、自分を犠牲にして他の人に尽くすことなどできるでしょうか。

 

Auburn Ponder Andersonさんについて

 

アーカンソー州の元英語教師で、執筆活動や教会でのお勤め、孫の世話を楽しむ。夫と二人の子供がマルファン症候群と診断されたことが、同疾患を知るきっかけとなった。

 

出典:http://blog.marfan.org/earthly-angels 

 

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